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海藻食は日本人を救う?

ふだんから何気なく食べている海藻は、いろいろな恩恵を私たちの体にもたらしてくれています。

日本は世界に類を見ない海藻大国だそうで、食べる以外にもさまざまな分野で幅広く活用されているようです。

 

海藻食文化の古参?

「よろこぶ」とか「若返る」などといわれ、古くから縁起のよいものとして珍重されてきたコンブやワカメ。

 めでたいときの贈答品として、時代は変われど現在も活躍していますね。

四方を海に囲まれた日本ならではの風習といえそうですが、最近では、モズクやメカブ、アカモクなどともに、健康食としての面にも注目が集まっているようです。

「海藻食文化」というのだそうですが、日本はその世界ではかなりの先輩格らしく、ルーツは縄文時代にまで遡ることができるらしいです。

 とはいってもコンブや海苔が庶民の食材として利用されるようになったのは江戸時代になってからといいますから、比較的最近といえるかもしれません。

 それまでは献上品や税金の代わりとして主に使われていたようです。

 

日本人の9割に海藻の分解酵素が?

 派手さは微塵もなく、食卓の主役をねらうでもなく、あくまでも地味を貫き通す海藻ですが、バイプレイヤーとしての存在感は誰もが認めるところ。かなり身近な名食材でもあります。

 思いつくままにあげると、コンブだしのうどんにおでん、ワカメのみそ汁、ノリ巻き、昆布巻き、アオサ汁、モズク酢、メカブ酢、テングサの煮汁を固めた寒天とそれを使ったようかんやゼリー菓子など、メニューは多種多様。

 日本列島周辺の海では1,400種もの海藻が採れ、120種ほどが食べられているらしいです。

 おもしろいことに海藻を分解する酵素遺伝子を持っている人は、中国や欧米、南米などの諸外国に比べて日本人が断然多く、9割だったそうです。新聞に紹介されていました(東京新聞・2022年2月13日)。

 世界でも稀有な海藻食の国といえそうです。

 

ヌルヌル、ネバネバに健康効果が?

 栄養的にも海藻は豊富な食物繊維をはじめ、鉄、マグネシウム、リン、カルシウムなどさまざまなミネラルを含んでいます。

とくにミネラルは体内では合成できないので、食べ物から摂取する必要があるといわれます。

ところでコンブやメカブ、モズクなどのヌルヌル、ネバネバを好まない人がいるようですが、このヌルヌル成分が大切なのだそうです。

これらには水溶性の食物繊維であるアルギン酸やフコイダンが含まれていて、食後の血糖値の上昇を抑制させたり、血圧の上昇を抑えたり、免疫細胞を活性化するといった健康に欠かせない働きがあるとされています。

毎日摂りたい食品ですが、ヨー素など摂りすぎに注意が必要な栄養もあるので注意が必要といわれます(日本人の食事摂取基準・2020年版/厚生労働省)。

 

コンブとワカメの消費量は東高西低?

ちなみに海藻の中でもっともポピュラーなコンブとワカメ。消費量(数量)の多い都市はどこでしょう?

コンブの1位/青森市(574g)、2位/山形市(485g)、3位/盛岡市(443g)。ワカメの1位/仙台市(1,840g)、2位/盛岡市(1,602g)、3位/秋田市(1,328g)でした(2019〜2021年平均/統計局)。

どちらもすべて東北の都市なのには何か理由が?

ただ金額で比較するとコンブの1位は富山市(1,942円)で、ワカメの1位は、やはり仙台市(2,688円)でした。

ちなみに消費量(数量)の最下位は、コンブは鳥取市(141g)、ワカメは那覇市(296g)でした。

 東高西低の傾向があるようです。

 

<参考>

*「海藻大国 日本」(東京新聞/2022.2.13)

*「統計局家計調査2019〜2021平均」(総務省)

*「日本食品標準成分表2020年版」(文部科学省)

*「健康長寿のための献立力アップ術」(フジッコ株式会社)

*「ミネラル・e-ヘルスネット」(厚生労働省)

 

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。