
加熱式タバコの受動喫煙による暴露が増えている!
「紙巻きタバコと比べると健康被害が少ない」などといったことで、最近、加熱式タバコの使用が増えているといいます。しかし受動喫煙による健康不安も依然として残ります。
本当に健康への影響はないのでしょうか?
若い人の約半数が加熱式タバコを使用?
加熱式タバコとは「タバコの葉やその加工品を燃焼させずに電気的に加熱し、エアゾル(霧状)化したニコチンと加熱によって発生した化学物質を吸入するタイプ」のタバコのことです(厚生労働省のe-ヘルスネット)。
従来の紙巻きタバコに比べると喫煙者本人や周囲への健康被害が少ないということへの「期待」もあって、徐々に使う人が増えているようです。
タバコを毎日か、ときどき吸っている人の中で、加熱式タバコを吸っている人の割合は、全体で男性が27.2%、女性が25.2%でした(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。
なかでも若年世代の喫煙者ほど加熱式タバコを使う人が多いようで、20代の男性で33.9%、女性で52.9%が、30代の男性の場合は47.6%、女性が50.0%でした。
40代(男性40.0%、女性25.0 %)以降は男女とも徐々に減っていく傾向があり、逆に紙巻きタバコを吸う人が8割から9割以上に増えていきます。
加熱式タバコにもある受動喫煙
加熱式タバコの主流煙は紙巻きタバコと同程度のニコチンを含み、少ないないながらもアセトアルデヒドやホルムアルデヒド、クリセン、ベンゼンといった多くの種類の発がん性物質が含まれているといわれます。
また副流煙についても加熱式タバコは紙巻きタバコのように葉を燃やすのではなく加熱して蒸気を発生させるものなので、副流煙は少なく受動喫煙はなさそうに思えます。
しかし厚労省のe-ヘルスネットでは「(化学物質の)量が少ないとしてもたばこ煙にさらされることについては安全レベルというものがなく、喫煙者と受動喫煙者の健康に悪影響を及ぼす可能性が否定できない」としています。
加熱式タバコによる受動喫煙への暴露が健康を害するリスクになることを認めています。
加熱式タバコの受動喫煙による健康被害?
加熱式タバコの受動喫煙による暴露について、さまざまな健康被害が予測されるなか、興味深い記事が新聞に紹介されていました(東京新聞/12.7「子のアレルギーリスク増」)。
それによると妊娠中に加熱式タバコを吸った、または受動喫煙にさらされたことよって生まれた子どもにアレルギー性疾患のリスクが高まったということです。
産業医科大学と大阪国際がんセンターによるその研究は、2021年に5,600組以上の3歳未満の子どもとその母親を対象に行われ、妊娠中の加熱式タバコの使用状況と子どものぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患との関連を分析したもの。
その結果、子どもにアレルギー性疾患のある人の割合が全体で7.8%だったのに対し、妊娠中に加熱式タバコを吸った人はその割合が15.2%で約2倍だったということです。
妊娠初期や吸う本数が増えるとそのリスクが高まるということでした。
紙巻きタバコ同様、周囲への配慮は必須
また、加熱式タバコを吸う人が増える中、加熱式タバコによる受動喫煙もここ数年で急上昇。
東北大学の調査によると、受動喫煙による暴露の割合が2017年には4.5%だったのが2020年には10.8%の人が毎日、受動喫煙の暴露リスクにさらされている状況だそうです。
加熱式タバコは発売開始から年月が浅く、健康への影響は明らかになっていないそうですが、前述の新聞報道のように徐々にリスクの解明が進んでくるでしょう。
あまり楽観しないで、加熱式タバコを使うときは紙巻きタバコ同様、周囲への配慮を忘れずに!……ですね。
<参考>
*「加熱式たばこの健康影響」(厚生労働省 e-ヘルスネット)
*「加熱式たばこにおける科学的知見」(厚生労働省)
*「加熱式たばこ」(国立がん研究センター・がん情報サービス)
*「喫煙しているたばこ製品」(公益財団法人 健康・体力づくり事業財団)
*「加熱式たばこによる受動喫煙への暴露が急激に増加」(国立大学法人 東北大学)