寄生虫による食中毒が増えている?
日に日に暖かくなるこれからの季節に注意したいのが食中毒。
細菌やウイルスはもちろんですが、山野草が原因となることもめずらしくないようです。
さらには、あの寄生虫による食中毒も近年増えているようです。
アニサキス幼虫による食中毒が増えている
食中毒は年間を通して発生しますが、暖かくなり湿度も高くなりはじめるこれからの時期は、カンピロバクターなどの細菌が原因の食中毒が増えはじめるといいます。
特にここ数年、時期を問わず増えているのがアニサキスの幼虫を原因とする食中毒(アニサキス症)だといいます。
アニサキスは寄生虫の一種で、幼虫は長さ2〜3センチ、幅0.5〜1ミリ程度の細長い糸のような線虫で、サバやアジ、カツオ、イカ、サンマ、ヒラメなどの魚介類に寄生しています(厚生労働省「食中毒」より)。
アニサキス幼虫による食中毒は、寄生している魚介類を生か、もしくは冷凍や加熱が不十分な状態で食べることで引き起こされるといわれます。
アニサキス幼虫は、寄生している魚介類が死んで時間が経過すると、内臓から筋肉(食べる部分)に移動するので、新鮮な魚を丸ごと購入したときは、鮮度が落ちないように冷やした状態で急いで持ち帰り、すぐに内臓を取り除くことが大切だといいます。
日本の食文化がアニサキス症の原因?
厚労省がまとめた「食中毒統計資料」(令和4年)では、食中毒の総件数962件のうちアニサキスの幼虫による食中毒(アニサキス症)の発生件数は566件(58.8%)、全体の6割近くを占めました。
統計を見るとアニサキス症は2018年から増え始めたようで、前年の2017
年は242件だったのが、この年は468件に急増。以後、300件台で推移し、令和4年に500件超えで過去最多となりました。
アニサキス症は日本だけでなく世界でも見られるようですが、ほとんどが日本で起きているといわれます。
日本の食文化である刺身と寿司、つまり「魚を生で食べる」ことにその理由があるようです。
冷蔵技術の向上も増加の一因?
アニサキスはマイナス20度で24時間冷凍すれば死んでしまうとされていますが、冷凍が不十分だったり、冷蔵のまま輸送されるといったこともアニサキス症増加の原因と考えられているようです。
冷蔵技術の向上で魚の鮮度が保たれ、それまで刺身で食べなかった魚を生で食べるようになったことも増加の一因ではとの意見もあるようです。
厚労省は「十分に加熱する(70度以上)」「目で確認する」「魚の内臓を生で食べない」などがアニサキス症の予防に有効だとしています。
毒をもつ植物による食中毒に注意
また、あまり目立たないのですが、植物性自然毒による食中毒も要注意。
暖かくなるこの時期は植物の芽吹きの季節。山菜に混じって有毒の野草を食用と勘違いして食べてしまうといった事故が報道されたりもします。
厚労省の「食中毒統計(令和4年)」によると、食中毒件数全体の3.5%(25件)、124人が有毒植物による食中毒を起こしています。
例えば、ニラやノビルと間違えてスイセンを食べたり、サトイモと違えてクワズイモの茎を食べたり、光に当たって緑色になってしまったジャガイモの表面を食べて食中毒を起こすといった事故が毎年起きています。
こうした有毒植物による食中毒は、平成25(2013)〜令和4(2022)年に213件(821人)も起きています。
食用の野草と確実に判断できない植物は、「採らない」「食べない」「人にあげない」でと厚労省では訴えています。
「あやしい」と思ったら「絶対に食べない」ことが、山海の恵みを楽しむための心得かもしれません。
<参考>
*「食中毒統計資料(令和4年)」(厚生労働省)
*「海の幸を安全に楽しむために」(農林水産省)
*「アニサキス症とは」(国立感染症研究所)
*「自然毒のリスクプロファイル」(厚生労働省)