睡眠に勝る薬はない?
世界の中でも睡眠時間の短さにおいてはトップクラスの日本。
たかが睡眠不足と侮ると、高血圧、肥満などの生活習慣病のリスクにもなりかねません。
「睡眠に勝る薬なし」……睡眠と健康の関係について考えてみました。
重要なことは眠っている間に行われる?
「睡眠に勝る薬なし」という言葉があります。
「Sleep is better than medicine」という外国のことわざが語源のようですが、国、地域の違いや時代を超えて、健康と睡眠の深い関係を示す言葉といえるでしょう。
睡眠がそれほど重要なのはなぜなのでしょう。
よくいわれるのが「疲労の回復」。次いで「脳の休息」です。でも睡眠中でも脳は休んでいるわけではなく、省エネモードで働いています。
例えば起きている間に入ってきた情報を整理・分類し、必要な情報だけ記憶して保存・定着させ、不要な情報は消去するといわれます。これによって知識が固定されたり、ストレスが取り除かれたりするというわけです。
「睡眠不足はミスを誘発する」とよくいわれるのは、この知識の定着がうまく行われないために起こるのだと考えられます。ストレスも取り除かれないので、嫌な記憶がいつまでも頭に残ることになります。
女性に多い睡眠への不満
他にも、内臓や筋肉のメンテナンスや成長ホルモンの分泌、免疫機能の維持や増強といったことも眠っている間に行われているといわれています。
睡眠が十分に取れないと、生きていく上で重要なこれらのことに支障が出てきて健康を害するようなことも起きてしまいます。
ところが日本人の睡眠時間はOECD(経済協力開発機構)加盟38か国中の最下位。さらに別な調査(「ストレス・睡眠と腸の健康の意識調査」株式会社ヤクルト本社)によると「平日の睡眠時間」が6時間未満の人は46.5%で、「良質な睡眠がとれている」のは半数以下の46.4%でした。
厚生労働省の調査でも全体の19.9%が「睡眠時間が足りなかった」と答え、34.7%が「睡眠全体の質に満足できなかった」と答えています(「令和3年度 健康実態調査結果の報告」より)。
特にどちらの項目も女性の割合が多く、睡眠時間の不足は21.8%、睡眠の質への不満が35.4%とどちらも男性を上回りました。
睡眠不足は生活習慣病のリスク要因
慢性的な睡眠不足になると、高血圧や糖尿病、肥満、心筋梗塞、脳梗塞、がんなどの生活習慣病のリスクが高まるほか、免疫力が低下して、かぜなどの感染症にかかりやすくなるといわれています。
その理由について、例えば血圧は交感神経が優位になると高くなるといわれますが、睡眠不足によって交感神経が優位な状態が長く続くと、血圧が高くなったままで下がりにくくなり高血圧になるといいます。
肥満は、睡眠不足によって食欲増進ホルモン(グレリン)の分泌が増える一方、食欲を抑制するホルモン(レプチン)の分泌が低下することによって食べ過ぎを招き、肥満につながるといわれます。
肥満は糖尿病のリスク要因ですが、睡眠不足によっても糖尿病のリスクは高まるようです。睡眠不足が続くと血糖を分解するインスリンの働きが悪くなり(インスリン抵抗性)血糖値が下がりにくくなるのです。
なぜ人間は人生の3分の1を眠ることに費やしているのか……?
睡眠については未だ謎が多いようですが、この問いに対する答えは……もういうまでもありません。
<参考>
*「働く女性の心とからだの応援サイト〜睡眠とストレスの関係〜」「令和3年度 健康実態調査結果の報告」(ともに厚生労働省)
*「ストレス・睡眠と腸の健康意識調査」(株式会社ヤクルト本社)
*「令和4年度 特定健康診査 結果活用ガイド〜良い睡眠で快適生活〜」(武蔵野市)