ストレスと腸の深~い関係
最近下痢や便秘、腹痛などに悩まされていませんか?
大腸の病気はいろいろありますが、今回はストレスが大きく関係するおなかのトラブルのお話です。
誰もがかかる可能性がある
検査をしても異常が見つからないのに、下痢や便秘、腹痛などを繰り返す病気があるといいます。それが「過敏性腸症候群」といわれるものです。
たとえば、通勤時や仕事中などトイレに行きづらい状況のときに腹痛が起こったり、便意を催したり。
また頻繁におなかの張りやオナラが出たり。下痢・便秘を繰り返したり。また頑固な便秘に苦しんだりと、さまざまな症状が起こります。
過敏性腸症候群は、暴飲や暴食が誘因となって起こる場合もあるそうですが、多くの場合ストレスが大きく関わっていることが知られています。
日本大腸肛門病学会によると、日本人の5人~10人に1人は過敏性腸症候群に悩まされているといいます。
ストレスの多い現代社会においては、誰でもかかる可能性があるこの病気、「自分もそうなのかも」と思い当たる人も多いのではないでしょうか?
脳と腸は互いに影響し合う
でも、なぜストレスが腸のトラブルにつながっていくのでしょうか?
腸と脳は、体の中では遠く離れた場所にあるように思えますが、実は腸と脳はとても密接な関係があり、互いに影響を及ぼしあうことがわかっています。これを「脳腸相関(のうちょうそうかん)」というそうです。
例えば、おなかの調子の鍵を握っているものにセロトニンという神経伝達物質があります。
セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分を安定させ気持ちを穏やかにする役割が知られています。
うつ病とも関連するので、セロトニンは脳でつくられていると思われがちですが、実は脳と腸の両方で分泌されています。しかも、意外にもセロトニンの約9割が腸でつくられているそうです。
セロトニンの合成には腸内細菌が深くかかわっているといわれていますから、腸内細菌を整えることは、心の健康にもつながっているようです。
セロトニン分泌が乱れると腸の動きも不安定に
腸の蠕動作用はこのセロトニンによってコントロールされているといわれています。
セロトニンがきちんと分泌されているときには腸の働きもスムーズですが、ストレスがかかってセロトニンの分泌のバランスが乱れてしまうと腸の動きが不安定になります。
その結果、腸の動きが活発になりすぎれると下痢を、大腸の動きが鈍くなると便秘を起こしてしまうというのです。
暴飲・暴食をしたわけでもないのにおなかの調子が悪いというときには、イライラやストレス、不安、緊張などがなかったか、振り返ってみるとよいかもしれません。
がまんせずにまずは受診を
下痢や便秘、腹痛、血便など腸に不調を感じるときは、その症状の背景に大腸がんなどの病気が隠れていないかを確認することがとても大事です。
不快な症状が続くときには、がまんせずに必ず消化器内科などを受診しましょう。
過敏性腸症候群と診断された場合は、生活習慣の見直しが重要なポイントになるといわれています。
規則正しい生活をして自律神経の働きを整えることがストレス解消に役立ち、排便のリズムもつくられるそうです。
そのためにも、暴飲・暴食、夜間の食事は避けて、まずは3食決まった時間に食事をしましょう。適度の運動や十分な睡眠をとることも大事です。
症状を悪化させる要因
症状を悪化させる食べ物としては、コーヒーやアルコール、辛みの強い香辛料があげられています。
とくに赤唐辛子の成分である「カプサイシン」は、お腹の食熱感や痛みにつながるといわれているので控えたほうがよさそうです。
また唐揚げやてんぷら、フライなどの揚げ物や洋菓子など、脂質が多い食品も症状を悪化させるといわれているので注意が必要です。
一方で、積極的にとりたいのがヨーグルトなどの発酵食品。これらは症状の軽減に有効だといわれています。
ストレスを感じたときにはアルコールやタバコ、暴飲暴食に逃げないことも大事なポイント。
仕事中には、短い休憩を入れたり深い深呼吸でリラックスを心がけたり。またオフタイムにはウォーキングやストレッチ、入浴でくつろぐなど自分なりのリラックスタイムをつくりましょう。
<参考>
※『きょうの健康』(NHK出版 2022年3月号)
※「過敏性腸症候群(IBS)」(日本消化器病学会ガイドライン)
※「過敏性腸症候群について」(日本大腸肛門病学会)
※「ヤクルト健康コラム」(ヤクルト中央研究所)
※「どうして腸は大切なの?」(興和株式会社)