健康のための食塩摂取は1日何グラム?
健康長寿に向けた2024年度からの新たな取り組みをまとめた厚生労働省の「健康日本21(第三次)」(案)がこのほど公表され、50項目ほどの数値目標が定められました。
今回は特に気になる食塩について考えてみました。
6割は「減塩」に関心がない、改善するつもりはない?
高血圧は脳卒中や心筋梗塞などのリスクを招くといわれ、予防のためには何といっても「減塩」が大事……ほとんどの人が知っている、健康の基本中の基本ですが、「言うは易く行うは難し」で、多くの人がなかなか実践できずにいるのも事実のようです。
厚生労働省の「食塩摂取量の状況別、食習慣改善の意思」(令和元年国民健康・栄養調査の概要)によれば、20歳以上の男性の39 .9%、女性の34.5%が食塩摂取量1日8g「健康日本21(第二次)の目標値」以上を摂取していても「改善することに関心がない」か「関心はあるが改善するつもりはない」と回答し、さらには男女の22.4%が「(1日8gを超えても)食習慣に問題はないため改善する必要はない」と回答していました。
男女の約6割が食塩摂取量が目標値(8g/1日)以上でも食習慣改善の意思がないということになります。
調味料、加工食品の食塩は意外に多い
では実際の1日あたりの食塩摂取量はどれほどかというと、男性で11g、女性で9gだそうです(「健康日本21(第二次)」)。
これは世界保健機関(WHO)が推奨する5gの約2倍に相当します。
というわけで今回の「健康日本21(第三次)」では1日あたりの食塩摂取量の数値目標(2032年度)をさらに少ない7g未満にするといいます。
食塩7gというと小さじ1杯強です。食塩1gに相当する量を調味料に換算してみると、メーカーによって差があるのであくまでも目安ですが、例えば濃口しょう油では7g(小さじ1杯強)、薄口しょう油6g(小さじ1杯)、みそ8g(小さじ1.3杯)、ウスターソース12g(小さじ2杯)、マヨネーズ40g(大さじ3杯強)などです。
加工食品にも塩分が多く含まれています。例えば、塩ザケ1切れ(60g)には0.9~2.9g、アジの開き1枚(60g)には1g、魚肉ソーセージ1本(120g)は2.5g、ウィンナーソーセージ1本(20g)0.4gなどです。
●塩分摂取の6割は調味料から?
食塩が含まれた食品は数多くありますが、私たちはいったいどんなものから塩分を摂取しているのでしょうか?
厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」によると日本人の66%、なんと6割以上の人が、塩分をしょう油やみそなどの調味料から摂取しているのだそうです。食べ物からの塩分摂取は、その約半分の34%でした。
さらに別の調査によると、日本人の塩分摂取源の約4割は、しょう油やみそ、塩、ソースなどの調味料そのもの。
でもこれらは自分で塩分摂取量をコントロールできるものです。
残りの約6割はパンや麺類、生や加工された魚介類、練り製品、漬物、カレールーなど、加工された食品に入っている食塩で、こちらは自分では摂取量をコントロールできません。
調味料と加工食品を上手に使い分けることで塩分の摂取量を減らせそうですが「1日食塩7g」の達成は、そんなに容易ではなさそうです。
1日7gの塩分摂取を達成するには
身近な食べ物には塩分が多く含まれているのが目立ちます。
例えばラーメン、カレーライス、カツ丼、牛丼、スパゲッティなど外食での人気メニューには、1食で塩分が4〜6gのものがほとんどです。ラーメンに至ってはそれだけで塩分が7gを超えるものもあるようです。
レストランで食べるにしろ、弁当を買って食べるにしろ、外食では、自分で塩分の摂取量をコントロールするのは困難です。ただレストランによってはメニューにエネルギーや塩分量を表示してある施設もあるようです。
どうするか? 例えば自分の好きな食べ物の塩分量を把握し、塩分が多いときは食べる回数を減らす、麺類のスープや出汁は飲み干さない、定食の漬物やみそ汁はがまんするといったことがよくいわれます。
またコンビニやスーパーで弁当や惣菜を買うときは、パッケージの食品表示を見て「食塩相当量」を必ず確認することも忘れないように。
やはり「健康を得るのに近道はない」ということでしょうか。
<参考>
*「健康日本21(第三次)推進のための説明資料(案)」(厚生労働省)
*「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(文部科学省)
*「塩分含有一覧表」(京都市立病院)
*「明日をつくる 今日の食卓〜塩分について【応用編】」「日本におけるナトリウム摂取源(日中米英4か国国際共同研究-INTERMAP-より)」(大塚食品株式会社HP)