プラスコラム
PLUS COLUMN

痩せた若い女性は糖尿病になりやすい?

糖尿病は中高年の肥満の人がなるものと思っていませんか? 

実は痩せた人でも糖尿病を発症するらしいです。

特に若くて痩せた女性は要注意とか。

痩せているから健康という発想はあまり当てにならないようです。

 

世界は肥満が問題。日本は痩せが問題?

「太っているよりも痩せている方が健康的である」……多くの人がそう思っているのではないでしょうか。

 長い間、そのように信じられてきましたし、「肥満イコール不健康」という思いから痩せようと努力した人も少なくないでしょう。

そんなことも手伝ってか女性の痩せ願望は根強いようで、世界的に見ても日本には痩せた女性が多いといわれています。

肥満度を表す体格指数のBMI(Body Mass Index)が18.5kg/m2未満の「痩せた女性」の比率が先進国の中では最も高く、厚生労働省の国民健康・栄養調査(2019年)では「痩せ」は20歳以上の女性全体の11.5%いて、特に20〜29歳の女性では20.7%も「痩せ」ているといいます。

 欧米では若者の肥満が増えていて、彼らへの減量指導が行われているのに対して、日本では逆に女性の「痩せ」が特異な状況として問題となっているようです。

 

痩せた若い女性に多い糖尿病リスク

そうした一般に広く伝わる、いわば「痩せ」の健康神話に大きな影響を与えそうな研究が、順天堂大学大学院医学研究科の研究グループによって報告されました。

結論を先にいうと「痩せは肥満と同じくらい不健康」だということです。

 18~29歳の痩せた(BMI 16.0~18.49kg/m2)女性と標準体重(BMI 18.5~23.0kg/m2)の女性を対象に75gの経口糖負荷を調べたところ、痩せた女性は標準体重の女性の7.4倍(13.3%対1.8%)もの高い割合で耐糖能異常による食後高血糖だと判定されたということです。

 アメリカの肥満の人の耐糖能異常の割合(10.6%)より多いといいます。

 耐糖能異常というのは血糖を下げるインスリンの分泌が低下したり、効きが悪くなる「インスリン抵抗性」という状態のことだそうです。

つまり、痩せた若い女性の1割以上は肥満した人と同様の代謝異常に陥り、将来、糖尿病を発症する可能性が高い予備軍でもあるというのです。

 

痩せた女性から生まれた子どもは生活習慣病になりやすい?

 研究によると痩せ型の若い女性には共通の特徴があるといいます。

 エネルギーの摂取量が少ない、身体的な活動量が低い、筋肉量が少ないことだそうです。つまり「食べない」「運動しない」「筋肉がつかない」といった「3ない」生活を送っているということです。

「痩せ」は自分の健康だけにとどまらず、妊娠した際、生まれてくる赤ちゃんにも影響があるようです。

厚生労働省のe-ヘルスネットよれば、痩せた女性は小さな赤ちゃんを産みやすく、早産も起こしやすいそうで、小さく生まれた赤ちゃんは、大人になって、高血圧や心臓病、糖尿病などにかかりやすいといわれています。

さらに日本の女性の「痩せ願望」は年々、低年齢化しているようです。

国立成育医療研究センターの調査によると、小学4年〜6年の36%が「やせたい」と答えたそうです。

また、自分は太っていないのに「太っている」「やせたい」と思っている小学生も多くいるといわれています。

「痩せ」は単に見た目ではなく、命に関わる深刻な問題でもあります。

自分のBMIが気になる人は、以下の計算式で求めることができます。

BMI=体重(kg)÷{身長(m)の2乗}

 

<参考>

*「食後高血糖となる耐糖能異常が痩せた若年女性に多いことが明らかに」(順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学・スポートロジーセンター/2021.2.16)

*「若い女性の『やせ』や無理なダイエットが引き起こす栄養問題」(厚生労働省 e-ヘルスネット)

*「食べない、運動しない『若い女性のやせ』に潜む糖尿病リスク」(日経PB/2021.4.14)

*「コロナ×こどもアンケート第5回調査 報告書」(2021.5.25)

*「胎児期に決まる『高齢の病』」(東京新聞/2023.5.10)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。