予防可能ながんの経済的負担は1兆円以上?
喫煙などに起因するがんによる経済的負担は、年間で1兆円を超えることが、国立がん研究センターなどの研究グループによって分かりました。
がんを予防することが経済的負担の削減につながると期待されます。
「がん」は40年以上、死因の第1位?
国民の2人に1人は、一生のうち一度はなんらかの「がん」になるということは、今では多くの人が知っています。
自身ががんであったり、身近な人ががんになったりといった経験を持つ人は珍しいことではありません。
国立がん研究センターによると2019年のがんの罹患者数は約100万人で、男性が約57万人、女性は約43万人だそうです。
またがんによる死亡者数は2021年で男性が約22万人、女性が約16万人で、がんの患者数は年々、増加傾向にあるそうです。
予防できるがんの経済的損失は1兆円超え?
毎年、実に多くの人ががんにかかっているのですが、そのことによる経済的な損失はいくらになるのか?
国立がん研究センターと国立国際医療研究センターの研究グループは、2015年にがんで医療機関を受診した404万人余りの診療報酬明細書(レセプト)の記録などをもとに、がん全体の経済的負担の総額を計算したところ、2兆8,597億円だったそうです。
男女での差はほとんど見られなかったということです。
また、がんは飲酒や喫煙、細菌やウイルスによる感染など、生活習慣や環境がリスク要因になるといわれています。
そうした予防が可能な要因に起因するがんの経済的負担は約1兆240億円で、男性が約6,738億円、女性は約3,502億円でした。
胃がんの経済的負担は約2,121億円
予防可能ながんのうち、もっとも経済的負担の大きいがんは、男女ともに胃がん(男性・約1,393億円、女性・約728億円)。
次いで男性は肺がん(約1,276億円)、女性は子宮頸がん(約640億円)でした。
国立がん研究センターよれば、日本人のがんの35.9%(男性は43.4%、女性は25.3%)は予防が可能なのだそうです。
特に予防可能な5つのリスク要因「喫煙」「飲酒」「感染」「過体重」「運動不足」について、それぞれ経済的負担を推計したところ、「感染」がもっとも高く約4,788億円。
内訳はピロリ菌による胃がんが約2,110億円、HPVによる子宮頸がんが約640億円、B・C型肝炎ウイルスによる肝臓がんが約607億円でした。
他に「喫煙」による経済的負担は約4,340億円で、そのうち肺がんはもっとも高い約1,386億円。「飲酒」は約1,721億円でした。
がん罹患リスクを低下させる5つの生活習慣
国立がん研究センターによると、予防できるがんで男性のトップは喫煙で23.6%、以下、感染(B型、C型肝炎ウイルス、ピロリ菌など)が18.1%、飲酒(8.3%)、高塩分摂取(3.0%)と続きます。
女性では感染(14.7%)がトップ、次いで喫煙(4.0%)、飲酒(3.5%)、高塩分摂取・運動不足(1.6%)でした。
それらの5つのリスク要因を遠ざけることによって、がんは予防が可能といわれています。
同研究センターによると「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの生活習慣に気をつけて生活した人と、そうでない人では、がん罹患リスクが男性で43%、女性で37%も低下するということです。
あらためて「がん」は生活習慣病だということを強く感じます。
<参考>
*「日本人における予防可能ながんによる経済的負担は1兆円超え(推計)」(国立がん研究センター 国立国際医療研究センター)
*「科学的根拠に基づくがん予防」(国立がん研究センター)