身近にある依存症
依存症というと意志が弱い人がなる特別な病気だと思っていませんか?
実は依存症は誰でもなる可能性があるといわれています。
依存症の落とし穴は意外と身近に潜んでいます。
さまざまな依存症
依存症とは、社会生活に支障をきたしているのに、特定のものや特定の行為をやめたくてもやめられない状態をいいます。
アルコール依存症やギャンブル依存症、薬物(処方薬、市販薬、違法薬物)依存症などが知られていますが、ほかにもWHO(世界保健機関)は、「国際疾病分類」に、オンラインゲームやテレビゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を、新たな依存症として加えています。
これら医学的に認められているもの以外にも、買い物や浪費、借金、恋愛、仕事、ダイエットなどさまざまなものが依存の対象になります。
なぜやめられないの?
何かに夢中になることは誰にでもありますが、依存症になると家族や仕事など生活の全てを犠牲にしてもなお依存の対象にのめりこんでしまいます。
「今日だけは止めよう」「これで最後だ」と思ってもやめられない……周囲は本人の性格的なものととらえてしまいがちですが、専門家は脳の機能の問題だと指摘します。
頑張れるのは脳の報酬系のおかげ
でも、脳の機能の問題とはどういうことなのでしょうか?
私たちは、頑張って何かに成功すると脳内でドーパミンという快楽物質がドッと放出されて、ご褒美をもらえたかのように快感や達成感を得て幸せな気持ちになります。
このように脳の報酬系が刺激されると、人は同じような満足感を得たいと思い、もっとそのことを頑張ろうとします。
やる気のサイクルがうまく回ると、どんどん意欲もわいてきます。これが本来あるべき脳の報酬系の姿だといわれています。
依存症は脳の報酬系の変化が原因
ところが、アルコールや麻薬や覚醒剤などの乱用の恐れがある薬物には、共通して報酬系を刺激する作用があるといわれています。
また、買い物やインターネットゲームなどの行為も努力なしで簡単に快感や爽快感が得られます。
しかし報酬系の刺激をもっと強くしようと繰り返すうちにドーパミンの反応が鈍くなります。すると「もっと」「もっと」と際限なく繰り返してしまうことになります。
つまり依存症とは脳内の報酬系と呼ばれる機能の変化が原因だといわれています。
専門機関に早めに相談を
依存症は、自分の意志でやめることができなくなる病気です。放っておけば、どんどんエスカレートして本人はもちろん家族も周囲も傷つきます。
「依存症かしれない……」と独りで悶々としている状態は、症状の悪化につながるといわれています。
ひとりで抱え込まずに、早めに最寄りの精神保健福祉センターや保健所などに相談してみましょう。
<参考>
※「のめりこまないで! ギャンブル依存に注意」(『きょうの健康』2023年9月号 NHK出版)
※『ウィメンズ・メディカ』(小学館)
※「依存症についてもっと知りたい方へ」(厚生労働省)
※「アルコール、薬物、ギャンブルなどをやめたくてもやめられないなら...それは「依存症」という病気かも。」(政府広報オンライン)