プラスコラム
PLUS COLUMN

怒りたくなったら紙に書いてポイ?

怒りの感情は誰にでもあります。 

ただ、たとえその怒りの矛先を誰かに向けたとしても、結局は自分に跳ね返ってくるといわれます。 

わいてくる怒りと上手に付き合う方法はないものでしょうか? 

 

「怒りの結果は、原因より重大」? 

自分の思い通りに物事が進まず思わず声を荒らげてしまった、イライラが抑えられずついカッとなってしまったなど、怒りをあらわにしてしまう経験はめずらしいことではないでしょう。 

でも多くの場合、こうして怒ったあと、「なんでこんなことしてしまったんだろう……?」と自分を責めてしまう人も少なくないようです。 

「怒りの結果は、怒りの原因よりもはるかに重大である」 

第16代ローマ皇帝であり哲学者でもあるマルクス・アウレリウス(121〜180年)の言葉だといわれています。 

約2000年も前の古代ローマ時代の人物の言葉ですが、現代にもそのまま通じる至言かもしれません。 

 

「怒りの感情は悪くない」というけれど……? 

そんな怖さと危険性をはらんだ怒り。怒りを放った側も、それを受けた側も少なからず心に傷を受けてしまうことは必至です。 

怒りをぶつけたとしても、残念ながら望んだ結果は得られません。 

「怒りの感情をもつことは悪いことではない」とよくいわれているようですが、怒りを無理やり抑えようとするのも大きなストレスになるといわれます。 

この厄介な怒りを穏便にやり過ごすことはできないものでしょうか。 

そんななか名古屋大学の研究チームが、怒りを抑える方法を実験で確認したという報道がありました。 

 

意図的に怒りを刺激する実験 

研究チームは、怒りを紙に書かせ、それを「捨てる」ことで怒りの気持ちが抑制されることを実証したといいます。 

実験では約100人のグループに「路上喫煙」や「学費値上げ」といった社会問題について意見を書いてもらい、それに対して「大学生の文章とは思えない」「ひどい文章」などと、意図的に悪い評価をして返却。 

講評を受け取った被験者は、そのときに感じた怒りやいらだちの気持ちを紙に書き、それを「丸めて捨てる」「机に置いたままにする」「シュレッダーにかける」といったことをして、その後の怒りの感情の変化をみることにしました。 

 

ゴミ箱に「ポイ!」で怒りが抑制 

その結果、気持ちを書いた紙を「丸めて捨てた」ケースでは「怒り」の感情は、文章を書く前のレベル近くにまで下がったといいます。 

シュレッダーで裁断した場合でも「捨てる」行為と同じくらいにまで怒りのレベルは減少したそうです。 一方「机に置いた」ケースでは怒りはあまり下がらなかったそうです。 

怒りと上手に付き合うといっても簡単ではありません。 

でも怒りの気持ちを紙に書いて、ゴミ箱に捨てるだけで、怒りが抑制されるとすれば、いつでも、どこでも、誰でも簡単にできそうです。 

では、すぐそばに紙と筆記具がないときに怒りを感じたらどうすれば? 

心配はいりません。怒りの感情は脳内物質の働きもあって6秒程度で鎮まるといわれています。 

鉛筆と紙を探している間に怒りはどこかへ消えていることでしょう。 

 

<参考> 

*「紙とともに去りぬ~怒りを『書いて捨てる』と気持ちが鎮まることを実証」(名古屋大学研究成果情報) 

*「イラッとしたら書き出してポイ!」(東京新聞/2024.4.15) 

*「“怒る脳”を鎮める『脳内物質』でイライラ解消!」(日経Gooday) 

*「自省録/100分de名著」(NHK Eテレ) 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。