
「カビ」にも「良い」「悪い」ってあるの?
「カビ」にも「良い」「悪い」ってあるの?
「カビ」と聞けば、たいがいの人は顔をしかめるに違いありません。
でもカビには「悪いカビ」もあれば「良いカビ」もあります。
そんなカビとヒトとの切っても切れない関係を探ってみました。
人類初の抗生物質は「カビ」から?
浴室はもちろん、壁や床、エアコンの内部、食べ物まで、場所やものを選ばず発生するカビ。
漢字では「黴」と書き、字面を見る限り、なんともいえないまがまがしさと不気味さを放っています。
そんなカビですが、悪さばかりしているわけではないようです。
ご存知のように、たとえば「ペニシリン」は人類初の抗生物質ですが、イギリスの細菌学者フレミングによって、アオカビに病原菌の増殖を抑制する効果のあることが発見されたことがきっかけだったそうです。
これ以降、カビから多くの抗生物質が作られ、人類は感染症とのたたかいで強力な武器を手にすることができたといわれます。
ちなみに「ペニシリン」の名称はアオカビの学名が由来だそうです。
みそ、しょうゆは「カビ」でつくられる?
カビという呼び名は俗称で、微生物としての分類では「真菌類」にあたり、キノコや酵母と同じ仲間だそうです。
わたしたちが毎日、口にしているみそやしょうゆ、みりん、日本酒などは麹菌とか麹カビといわれるカビを利用して造られていたのです。
麹菌には、みそやしょうゆ、みりん、日本酒造りに使われる黄麹菌、焼酎や泡盛づくりに欠かせない白麹菌と黒麹菌など、いくつかの種類があるようです。
どのカビも毒をつくらない安全なものとされています。
麹菌は2006年に日本醸造学会によって「国菌」に認定されました。
なんでも麹菌の培養技術が確立したのは室町時代だそうです。
以来、麹菌は日本食を彩る多様な発酵食品を育んできたというわけです。
カビはデンプンや糖分が好み?
一方、バイキンは漢字で「黴菌」とも書かれるように、カビにはアレルギー疾患や病気の原因になるなど、健康をおびやかす危険な顔もあります。
カビはパンやごはん、餅、お菓子、ミカンなどのデンプンや糖分を含む食品を特に好み、生産された毒はガンや食中毒の原因になるといいます。
カビの毒は熱に強く、加熱処理しても死滅しないといわれます。
ちょっとくらいのカビなら取り除けば大丈夫と思うのは危険。
見えないところまでカビが侵食していることがあるので、廃棄するのがいいようです。
ピーナッツなどのナッツ類もカビが生えていたり、虫が食っていたりするものは食べない方が安全だそうです。
カビが増殖しやすい条件とは?
カビは食品ばかりでなく、浴室の垢、髪の毛、せっけんカスのほか、ペンキの成分、プラスチックなども栄養にして発育するといわれます。
また、湿度が70%以上で発育できるので、住環境でいえばキッチンや浴室、下駄箱と中の靴、エアコンの内部などはもちろん、窓枠、家具の裏側、寝具などにも生えることがあるようです。
ほとんどのカビは、温度が10〜30℃を好み、酸素を必要とします。
つまりカビが増殖しやすい環境とは、ホコリや垢などで汚れていて、水気が多くて、日が当たらないところといえそうです。
カビが生ごみを分解して土に?
カビの予防には、汚れをためない、湿気の除去、頻繁な換気や通気などがいわれます。
ただ残念ながらカビの増殖を完全に防ぐのは容易ではなさそうです。
こんな悪玉な面もあるカビですが、一方では、家庭の生ゴミや自然の落ち葉、動物の死骸やフンなどを分解して、栄養豊富な土に戻してくれるありがたい存在……でもあるようです。
<参考>
*「暮らしに役立つカビ」(東京新聞サンデー版/2024/8/4)
*「くすりのあゆみ」(日本製薬工業協会)
*「食品衛生の窓」(東京都保健医療局)
*「知る・学ぶ お酒の博物誌」(月桂冠株式会社)
*「カビを除去して、気持ちの良い部屋にしよう!部屋に生えてしまったカビの掃除方法」(株式会社ダスキン)