
「スマホ依存」になると脳が劣化する?
スマホを使い続けることによる健康リスクは、今までさまざまいわれていますが、「脳が劣化する」となれば、もはや看過ごすことはできません。スマホを使いすぎると脳がどうかしてしまうのでしょうか?
スマホがないと「夜も日も明けない」?
スマートフォンの普及率は今や国民の9割を超えているといいます。実際、通勤や帰宅時間の電車、バスを見れば、ほとんどの人がスマホにジッと視線を落としている光景はめずらしくありません。スマホはまるで体の一部、絶えず手に触れていないと落ち着かない人も多いようです。
まさにスマホがないと「夜も日も明けない」といった状況です。
子どもも大人と同様にスマホは必須。こども家庭庁によると小学生の42.9%、中学生の78.7%、高校生の97.4%がスマートフォンを利用しているといいます(令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査)。
7時間以上もスマホ漬けが3割?
利用時間も年齢とともに増加傾向にあり、平日の平均が10歳で3時間29分、15歳が5時間15分、17歳は6時間18分でした。
なかには7時間以上の超ヘビーユーザーが10歳の5.1%、15歳の23.4%、17歳の33.8%もいました。
また、別の調査によると、20〜50歳代の1日のスマホ利用時間は、3時間以上が過半数の53.6%。5時間以上のヘビーユーザーが20歳代で22.0%、30歳代で23.0%、40歳代が19.0%、50歳代で9.0%でした(シチズン時計【時間意識調査】「ビジネスパースンの生活時間」)。
30歳代以下の若い世代ほど、スマホ利用率が高い傾向にあるようです。
スマホいじりがやめられない理由は?
年齢を問わずスマホに魅入られ、こんなにも多くの人を夢中にさせる理由はなんでしょう?
多くの専門家が指摘するのは「ドーパミン」という脳内伝達物質の存在。
ドーパミンとは「幸せホルモン」「快楽物質」とも呼ばれる報酬系の脳内物質。目の前においしそうなケーキが置いてあったり、知らないレストランの情報に触れたりするだけでドーパミンが分泌されるといいます。
特にドーパミンが強く出るのは「何かに集中するとき」「中身が分からずにドキドキするとき」と専門家は指摘します。
スマホがあればゲームの刺激に浸り、ネットを通じて魅力的な情報に触れ、SNSでのやりとりもできます。そうした刺激に次から次と出会うことでドーパミンがどんどん分泌され、ついにはスマホを片時も手離せない状態におちいるというわけです。
脳内物質ドーパミンが出にくくなる?
ところがゲームやネットなどからの強い刺激に脳が慣れてしまうと、それ以外の少々の刺激ではドーパミンが分泌されにくくなるといいます。
意欲がわかない、集中できない、楽しくないというシーンも増えて、生活に支障が出てきかねません。人生への満足感や幸福感も低下してしまうといいます。
さらにスマホへの依存によって、記憶や感情をコントロールし、人を思いやる、がまんする、挑戦するなど、人間らしさをつかさどる脳の前頭前野の働きが劣化するという研究もあるようです。感情の暴走や、がまんができない状態におちいってしまうというのです。
スマホで「失われるもの」はなんですか?
「子どもたちがデジタル機器を使う時間を制限している」……米国IT大手の創業者の言葉といわれます。彼をはじめ、巨大IT企業のトップたちが、わが子にスマホなどのデジタル機器を与えないといったエピソードは広く知られています。
それは「麻薬に匹敵する」とまで語るIT関係者もいるといいます。
日本医師会と日本小児科医会は、『スマホの時間 わたしは何を失うか』とするポスターで注意を促しています。
そこに示されているのは、「体力」「睡眠時間」「学力」「視力」「コミュニケーション能力」「脳機能」……みなさんは、スマホで「失うもの」に、心当たりがありますか?
<参考>
「スマホが招く『負の循環』」(東京新聞/2024/8/13)
「スマホ依存になってくると、脳が変質」(滋賀県愛荘町)
「『ジョブズ』が我が子のスマホ利用を禁じた理由」(デイリー新潮/2020.12.24)