
肥満は自己責任か、それとも遺伝か?
太り過ぎの人に対して、「だらしない生活を送っているから」といった決めつけをしている人がいるようです。
でも、肥満には少なからず遺伝的な要因も関与しているというのですが……?
男性の3割、女性の2割が「肥満」?
「最近、太ってきた」「おなかの脂肪が気になる」……体重計の数値に思わずため息をついてしまう、そんなことありませんか?
厚生労働省の「国民健康・栄養調査(令和4年)」によると、肥満者(BMIが25kg/m2以上・20歳以上)の割合は、全世代平均で男性が31.7%、女性が21.0%で、国の目標値(男性28%、女性19%)を上回っています。
世代別で見ると男女ともに20~29歳がいちばん低く、男性が19.1%、女性が9.2%。ところが30歳代に入ると男女の肥満者の割合はその2倍近くまで上昇。
30~39歳の男性は31.9%、女性が17.3%にもなります。
この年代以降も肥満傾向は高い割合を示し、男性の50歳代で40%を超え、女性も40歳代以降、20%前後を維持しています。
肥満は「自己責任」「怠惰」ではない?
「太っているのはだらしないからだ」とか「自己管理能力がないんじゃない?」などと周囲からいわれて、深く傷ついている人も多いでしょう。
しかし、「肥満は自己責任」「性格上の問題」といった認識は、今では誤った考え方だといわれています。
肥満には遺伝的要因が大きく関係しているというのが、近年では一般的になっています。
両親が太っているからといって必ずしも自分が肥満になるということではありませんが、肥満のリスクを受け継ぐことにはなるようです。
また、肥満の発症には他に体質的な要因、例えば消化、吸収、代謝なども関係していて、太りやすさには個人差があるともいわれます。
誰もが肥満のリスクを抱えている現代社会
さらに現代社会は誰でも肥満になる可能性があるといわれます。
例えば仕事に忙殺されて、毎日きちんとした食事ができない。ストレス発散で爆食したり、ファストフードやお菓子が食事がわり。深夜に食べたり飲んだりすることが多い。移動は車ばかり。休日は疲れ果て、運動するより寝ていたいなど、誰もが肥満のリスクをかかえているといえます。
このように肥満の原因には、遺伝的、体質的要因などの他に環境的な要因といわれる、例えば不規則な食事時間、偏食、過食、運動不足といった生活習慣の問題など、様々な要素が関わっていると考えられています。
「肥満」と「肥満症」は違う?
ところで「肥満」は病気ではなく症状で、体に脂肪が過剰に蓄積して「太っている」状態を表す言葉です。
BMIが25以上を肥満としています。
それに対して「肥満症」とは、肥満によって健康をおびやかす高血圧や糖尿病などの合併症(健康障害)があったり、そうした合併症を起こすリスクが高く、減量治療を必要とする歴とした病気です。
また、メタボリックシンドロームと呼ばれる「内臓脂肪型肥満症」の場合は、合併症がなくても近い将来、糖尿病や高血圧などの合併症を起こすことが予測されることから、病気としての「肥満症」と診断されます。
ちなみに肥満によって引き起こされる合併症には他に、脂質異常症、高尿酸血症・痛風、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、睡眠時無呼吸症候群、月経異常・女性不妊、肥満関連腎臓病などがあります。
「肥満」を放置すると「肥満症」になる?
e-ヘルスネット(厚生労働省)によると、BMIと日本人の総死亡との関連は「U字型」だそうで、太りすぎ(BMI30以上)でも、やせすぎ(BMI18.5未満)でも死亡率の上昇と関連がみられるそうです。
死亡リスクが低いのはBMI25前後(21~27)だそうですが、BMI25~27は肥満1度に当たり、これを超える状態が長く続くと高血圧や糖尿病、脂質異常症などになりやすくなるそうです。
肥満をそのまま放置すると「肥満症」に移行する可能性が高くなるそうです。
食や運動を含めた生活習慣の見直しで、肥満は回避できるといわれています。
「肥満症」になる前の早めの減量が大切といわれます。
<参考>
*「e-ヘルスネット/肥満と肥満症」(厚生労働省)
*「あなたの肥満、治療が必要な『肥満症』かも⁉︎」(一般社団法人 日本肥満学会)
*「肥満は自己責任ではありません~現代の考え方~」(大正健康ナビ/大正製薬株式会社)
*「健康コラム/生活習慣病Q&A」(オムロン ヘルスケア株式会社)