
喫煙率減少の一方、普及する加熱式タバコ?
喫煙率が減少しているといいます。
その一方、加熱式タバコが普及しているとも。
紙巻きタバコよりも有害性の減少を期待してのことかもしれませんが、本当に加熱式タバコの健康リスクは低いのでしょうか?
減り続ける喫煙率。過去最低に?
かつて「タバコは健康のバロメータ」などと発言して、国民からひんしゅくを買った旧厚生省の大臣がいました。
でも今や喫煙の健康リスクは議論の余地のない、いわば常識ともいわれます。
そうしたタバコに対する社会の変化もあるのか、喫煙率は年々減少し続けているようです。
厚生労働省が2022年に行った調査(令和4年国民健康・栄養調査)によると、20歳以上の男女でタバコを習慣的に喫煙している人(毎日吸っている、ときどき吸う日がある)の割合は全体の14.8%でした。 前回(2019年)の調査(16.7%)より1.9%下回りました。
男性は24.8%(前回27.1%)、女性は6.2%(前回7.6%)で男女ともに減少。いずれも過去最低の喫煙率だそうです。
加熱式タバコにも受動喫煙リスク?
その一方、「紙巻きタバコと比べると健康被害が低い」といった考えからでしょうか、近年、加熱式タバコの使用が増えているといいます。
厚生労働省の調査でも、そうした傾向があらわれているようです。
2019年の国民健康・栄養調査では、「紙巻きタバコ」を習慣的に喫煙している割合が、男性で79.0%だったのが2022年調査では73.6%に。女性で77.8%だったのが67.2%に、それぞれ減少しました。
代わって「加熱式タバコ」の使用が、男性は27.2%から30.1%に、女性は25.2%から34.4%に、それぞれ増加しています。
また、新聞によると、「加熱式タバコ」だけを吸う人は、「紙巻タバコ」だけを吸う人に比べて自宅で吸う傾向が1.5倍ほど強いことが、専門家の研究で分かったといいます(東京新聞/2024.5.1)。
加熱式タバコは紙巻きタバコより健康リスクが低いという思い込みによるものと思われ、家庭内での受動喫煙も懸念されるといいます。
加熱式タバコの有害性は「低くない」?
加熱式タバコとは「タバコの葉やその加工品を燃焼させずに電気的に加熱し、エアロゾル(霧状)化したニコチンと加熱によって発生した化学物質を吸入するタイプ」のタバコのことです(厚生労働省のe-ヘルスネット)。
タバコの葉などを燃やしていないので、燃焼による煙が出ないことから「有害性は低い」「健康には影響しない」などといわれているのです。
しかし、多くの専門家は「有害性が低いとはいえない」といいます。
加熱式タバコの主流煙には紙巻きタバコと同じくらいのニコチンが含まれています。
また、少量とはいえアセトアルデヒドやホルムアルデヒドといった多くの種類の発がん性物質が含まれているといわれます。
加熱式タバコは紙巻きタバコのような副流煙は少なく、受動喫煙はなさそうに思えます。
しかし厚労省は「喫煙者と受動喫煙者の健康に悪影響を及ぼす可能性が否定できない」(e-ヘルスネット)として、加熱式タバコによる受動喫煙の健康リスクを指摘しています。
加熱式タバコのさまざまなリスク
加熱式タバコによる健康リスクは、例えば、がんや高血圧、心臓や肺などへの影響が懸念されています。
また、加熱式タバコを使うことで禁煙がむずかしくなるといった研究や、加熱式の普及によって「禁煙したい」人の割合が減少してしまった、加熱式タバコが「禁煙への思いをじゃまして、若い世代の喫煙を習慣化させる」といった専門家の意見もあるようです。
厚労省の調査によれば、20~29才の加熱式タバコの喫煙割合は2019年に男性33.9%、女性52.9%でしたが、3年後の2022年には男性43.9%、女性85.7%に上昇。
逆に禁煙志向の割合は、女性は17.6%から21.4%に増えていますが、男性は19.6%から9.8%に半減してしまいました。
加熱式もやっぱり「タバコ」……。「健康のバロメータ」なんて、やっぱり空事でしかないようです。
<参考>
*「加熱式たばこの健康影響」(厚生労働省 e-ヘルスネット)
*「加熱式たばこにおける科学的知見」(厚生労働省)
*「『加熱式』の受動喫煙 懸念」(東京新聞・2024.5.1)
*「加熱式たばこが引き起こす細胞毒性とがん増殖の可能性」(横浜市立大学)
*「新型タバコ(加熱式タバコ・電子タバコ)の発癌リスクについて考える」(一般社団法人 兵庫県歯科医師会)