
「脂質異常症」を放置すると、どうなる?
健康診断で指摘されることが多い「脂質異常症」。これといった自覚症状がないので放置しがちですが、重大な健康リスクを招きかねないといいます。
どんなことに注意すればいいでしょう?
健診で「ひっかかる」人が約6割?
毎年の健康診断を受けていますか? 厚生労働省の「国民生活基礎調査(令和4年)」によれば、20歳以上で過去1年間に健診や人間ドックを受けたことがある人は、男性が73.1%、女性65.7%だそうです。受けていない人が3割前後もいるのは意外ですね。
ところで健診の結果で誰もが気になるのは「所見あり」では? いわゆる「ひっかかってしまった」といわれるものです。
厚生労働省の「定期健康診断実施結果報告(令和5年)」によれば、健診で見つかる「所見のあった」人の割合は全体の58.9%。これは過去に同調査で公表されている中でも最多の「有所見率」だそうです。
健診で異常を指摘されやすい項目は?
「所見に異常」が認められると指摘されている中で、もっとも多い項目は「血中脂質」で31.2%。次いで「血圧」が18.3%、「肝機能検査」が15.9%、「血糖」が13.1%、「心電図」が10.7%と続きます。
およそ3人に1人が指摘される「血中脂質」の「所見あり」ですが、どういうことでしょう?
「血中脂質」とは、血液中に含まれる脂質のことで、主なものにコレステロールと中性脂肪があります。
コレステロールは細胞膜を構成する重要な成分で、ホルモンや消化吸収に必要な胆汁酸などの材料になります。
また、中性脂肪は脂肪組織に蓄えられて、必要に応じてエネルギーとして利用されたり、皮下脂肪として体の保温、衝撃の緩和などの役割を担っているとされます。
通常、血中脂質は一定の量に保たれるようにコントロールされていますが、そのバランスが崩れて脂質が増えると様々な問題を引き起こします。
血中脂質と「脂質異常症」の関係は?
血中脂質が基準値を超えて起こるのが「脂質異常症」で、3つのタイプがあるといいます。
1つはLDLコレステロールが多い「高LDLコレステロール血症」、2つ目はHDLコレステロールが少ない「低HDLコレステロール血症」、3つ目は中性脂肪(トリグリセライド)が多い「高中性脂肪血症」です。
LDLコレステロールは肝臓に蓄えられたコレステロールを全身に運ぶ働きがある一方、増えすぎると血管の壁にたまり動脈硬化のリスクがあることから「悪玉」コレステロールと呼ばれています。
HDLコレステロールは、逆に余分なコレステロールを全身から回収して肝臓に戻す働きがあることから「善玉」コレステロールと呼ばれています。
中性脂肪は動脈硬化の直接の原因にはならないとされますが、中性脂肪が増えすぎると悪玉(LDL)コレステロールが増え、善玉(HDL)コレステロールが減りやすくなるといわれます。
脂質異常症は動脈硬化の危険因子?
脂質異常症はそれ自体、特に自覚症状がないことから、健診で「所見あり」と指摘されても放置されがちといわれます。
しかし、脂質異常症をそのままにすると、血管内に悪玉(LDL)コレステロールの蓄積が進み、動脈壁は厚く硬くなっていくといいます。
また善玉(HDL)コレステロールが少ないと、血管内の余分なコレステロールが回収されず血管内にたまったままになってしまうといわれます。
脂質異常症を放っておくと動脈硬化を招き、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などが発症しやすくなるといわれる所以です。
脂質異常症の危険因子として、食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、脂質の多い食事、喫煙といった生活習慣が深く関わっているとされます。
コレステロールなどの脂質を含む食品の摂取を減らしたり、日頃から運動の習慣をつけるなど、生活習慣の改善が大切といわれます。
健診結果の「所見あり」を見て見ぬ振り……していませんか?
<参考>
*「定期健康診断結果報告」「国民生活基礎調査(令和4年)」(厚生労働省)
*「健診や人間ドックを受けている人はどれくらい?」(公益財団法人 生命保険文化センター)
*「脂質異常症」(国立循環器病研究センター)
*「脂質異常症 コレステロールと中性脂肪がたまると…」(全国健康保険協会)