
アルコールは筋肉を壊す?
筋トレなどの運動で汗を流した後に、アルコールを自分への「ごほうび」として口にする人も多いのでは?
でもご用心!
アルコールの摂取によって「筋肉」が壊れてしまうといいます。
そんなことあるのでしょうか?
運動後のアルコールは「ごほうび」にならない?
お酒の飲み過ぎは健康に悪いという以外にも、最近では、お酒は体の「筋肉」にもよからぬ影響を及ぼすともいわれています。
筋肉は体を動かすうえでなくてはならない重要な組織です。
今では自分の健康を意識する人が増えたことから、ジムに通うなどして筋トレを始める人も多いといいます。
ところが筋トレをして鍛えたつもりの筋肉が、アルコールを摂取することによって、その成長が阻害されてしまうといいます。さらには筋肉が破壊されるとまでいわれているようです。
飲酒によって筋肉が壊れるなどということがあるのでしょうか?
飲酒が男性ホルモンの分泌を抑制?
お酒を飲むと体内のホルモンバランスがくずれるといわれます。
例えば男性ホルモンの「テストステロン」には筋肉の成長を促す働きがあるのですが、飲酒によって分泌が減少し、筋肉の成長が抑えられてしまうといいます。
また、コルチゾールはストレスを受けたときに分泌されるホルモンで、筋肉を分解して糖をつくる働きがあります。
ところがお酒を飲むと分泌が増え筋肉の分解が促進されてしまうといいます。
ただ、こうした傾向は男性だけにみられ、女性の場合は男性とは逆に酒を飲んでもテストステロンが上昇。
コルチゾールは男性同様に上昇したそうですが、飲酒による筋肉への影響は男性に比べて女性の方は少ないといわれます。といっていくら飲んでも安心ということではなさそうです。
筋トレ後の飲酒は筋肉合成を鈍らせる?
筋肉でのタンパク質の合成に重要な役割を担っているのが肝臓です。
肝臓は飲酒によってアルコールが体内に入ってくると、有害物質のアセトアルデヒドの分解と無害化に忙しくなり、筋タンパク質の合成が妨げられるといいます。
また、筋トレをすると筋肉の合成を促すmTOR(エムトール)という酵素が細胞内で活性化します。
ところが、飲酒をするとこのmTORの活動が低下して、筋肉の合成率が約3割低下するという海外の研究もあるようです。 この場合も女性は男性ほどの影響を受けないそうです。
体重1kg当たり純アルコール量1g?
ではどうやってアルコールと付き合うのがいいのでしょうか。
海外の研究では、男性で体重1kg当たり純アルコール量1g程度を摂取した場合、テストステロンに変化がないか、または増加を示したといいます。
これを仮に体重60kgの人に当てはめると純アルコール量は60gになります。アルコール度数5%のロング缶ビール(500ml)なら3本分です。
厚生労働省がすすめる「節度ある飲酒」は1日の純アルコール量を20gとしていますが、60gはその3倍にも相当しますから、節度をはるかに超えた飲酒量といえます。
筋肉に悪影響を与えない飲酒とは?
この研究では体重1g当たり純アルコール量1gを越えると、テストステロンの分泌が抑制されたそうです。
ただ、アルコール分解酵素を持たない人が多く、酒に弱いとされる日本人は、その半分の0.5g程度の純アルコール量が筋肉合成への影響が少ないのではとする研究者もいるようです。
筋トレなどの運動直後は筋肉の合成が高まり、時間が経過するに連れ合成率は下がっていくといいます。
飲酒はトレーニングの直後は避け、時間を十分にあけるのはもちろんで、あければあけるほどよいようです。
仕事帰り、夜のトレーニングをがんばった自分へのごほうびに「一杯!」といきたい気持ち、できれば翌日までがまんするのがいいらしいのだが…。
<参考>
*「陸上競技の理論と実際~飲酒は筋肉を破壊する?」(筑波大学 陸上競技研究室)
*「筋トレ後ぐっと一杯 飲酒で効果『3割消える』ことも」(日本経済新聞/2020.11.26)
*「筋トレ後にお酒を飲むのはOK?両立するにはどうしたらいい?~iichikoスタイル~」(三和酒類株式会社)
*「【筋トレ×お酒】トレーニング効果を最大化する飲酒のコツと注意点」(鈴廣かまぼこHP)