
あなたの好きなその香り、他の人には不快かも?
香料の入った柔軟剤や合成洗剤などによって、頭痛や吐き気などさまざまな体調不良を起こす人たちがいるといいます。自分が好きな香りでも、なかには不快に感じる人がいるという「香害」について考えてみました。
「香害」って知っていますか?
「香害(こうがい)」という言葉、耳にしたことありませんか?
柔軟剤などに含まれる合成香料(化学物質)のにおいで頭が痛くなったり、吐き気やめまいなどの体調不良を引き起こすことをいいます。
「香害をなくす連絡会」(日本消費者連盟など7団体で結成された市民団体)による調査(2019年12月下旬~2020年3月末)によれば、「香りつき製品」のにおいで「具合が悪くなった」ことが「ある」と答えた人は全体の約8割で、そのほとんど(82.6%)が女性でした。
体調不良を引き起こすとされた製品は「柔軟剤」が全体の86.0%もありました。その他に、「香りつき合成洗剤」(73.7%)、「香水」(66.5%)、除菌・消臭剤(56.8%)、制汗剤(42.5%)などがあげられています。
「香害」による体調不良の例では、「頭痛」(67.4%)と「吐き気」(63.9%)が多く、ほかに「思考力低下」(32.9%)、「せき」(32.4%)、「めまい」(24.9%)、「呼吸困難」(21.1%)など、さまざまです。
柔軟剤ブームと増加する健康被害相談?
「柔軟剤」は「衣類の風合いを柔らかく保つことと静電気防止効果を持つもの」として、特に2000年代に入ってから柔軟剤ブームが起こったといわれています。
国内製造の柔軟剤の販売量が2013年の28.2万トンから5年後の2018年には3割増の37.0万トンに増えたことからも流行がうかがえます(「洗浄剤等の年間製品販売統計」より/日本石鹸洗剤工業会)。
それにともなって柔軟剤に関する相談も増加。
国民生活センターによれば、同センターに寄せられた柔軟剤のにおいに関する相談件数は2014~2020年度の間に928件あり、そのうち594件(64%)が、なんらかの健康被害があったとするものだといいます。その8割は30~60歳代の女性が占めていたそうです。
柔軟剤を2倍以上の量で使う人が2割?
洗濯するときにどのくらいの人が柔軟剤を使用しているのでしょうか?
日本石鹸洗剤工業会の「2020年洗濯実態調査」によると柔軟剤を「毎回使う」と答えた人はなんと74.6%。
さらに「ときどき・たまに使用」を合わせると93.6%で、ほとんどの人が洗濯時に柔軟剤を使用していました。
また、柔軟剤を容器に表示された「目安どおり」に使う人は6割弱の58.2%、「目安より多め」は16.6%でした。
なかには目安の2倍以上の量を使う人もけっこう多く、縦型の洗濯機で20%、ドラム式で16%でした。
柔軟剤は使用量が多いと香りが強くなりやすいといわれます。
さらに注意したいのは、人の嗅覚には馴化(じゅんか)という現象があり、馴れてくるとにおいを感じにくくなるといわれます。
同じ香りの柔軟剤を使い続けると、香りが弱くなったように感じられ、においを強くしようと使用量が増えてしまうことがあるというのです。
その香りで体調不良を起こす人がいる?
柔軟剤には香りの効果をうたった製品が多く販売されていることもあって、消費者は柔軟剤の本来の効果よりも「香り」に着目して商品を選ぶ傾向があると指摘する専門家もいます。
事実、「2020年洗濯実態調査」によると「香りつき」の柔軟剤を購入する人は80.3%にもなります。反対に「香りなし」の柔軟剤を利用する人は15.8%で少数派です。
香りに対する感じ方は人それぞれ異なります。ある人にとっては「かぐわしい」香りでも、別の人にとっては不快なこともあります。
なかには、香害による健康被害によって、職場や学校に行けなくなる人も少なくないようです。
さらに香害がきっかけで「化学物質過敏症」を発症するケースもあるといいます。
消費者庁、厚生労働省をはじめ各省庁は連携して『知ってください‼︎ その香り 困っている人もいます』とする啓発ポスターを作成しています。
柔軟剤に限らず合成香料(化学物質)を含む商品は身のまわりにあふれています。
これらを使うときは使用する量や場所に注意するのはもちろん、周囲への配慮が強く求められるのはいうまでもありません。
<参考>
*「『香害』アンケート集約結果発表」(香害をなくす連絡会)
*「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供(2020年)」(国民生活センター)
*「2020年洗濯実態調査」(日本石鹸洗剤工業会HP)
*「日本に新しい公害が生まれています。その名は『香害』」(シャボン玉石けん株式会社HP)