
食塩とナトリウムは同じ? 違う?
ナトリウムといえば体に必須のミネラルのひとつですが、そのナトリウムを食塩と同じと考える人が意外に多いようです。混同しがちなナトリウムと食塩について考えてみました。
ナトリウムと食塩は何が違う?
「ナトリウムって何なのか?」なんて、ふだんは考えないですよね。
お菓子やカップ麺、レトルトカレーなど、さまざまな加工食品のパッケージに印刷された「栄養成分表示」と書かれた四角い囲みを見たことがあるかと思います。そこには、「エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物……」といった栄養成分の最後に、「ナトリウム」と表示があり、さらに「食塩相当量」という文字を見ることができます(ただ最近は「ナトリウム量」を省いて「食塩相当量」だけの表示もあるようです)。
「ナトリウムって塩でしょ?」と思った人も多いでしょうが、ナトリウムと食塩は「違う」といいます。何が違うのでしょう?
食塩はナトリウムと塩素の化合物?
食塩は、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)の化合物で、塩化ナトリウム(NaCl)のことを指すそうです。つまりナトリウムは食塩の成分のひとつで、この2つはイコールではなかったのです。
さらにナトリウムと塩素は、それぞれ単体では塩味をもたらさないといいます。2つが結合して塩化ナトリウムになることで食塩の塩味が生まれるのだそうです。食塩は、塩化ナトリウムが豊富な海水や岩塩から製造されているといいます。
塩味は旨味でもあります。食欲を増進させる効果があるそうです。塩味は本能的に好まれる味であるともいいます。そんなことから、ややもすると摂り過ぎになって、さまざまな健康リスクを引き起こしかねません。
ナトリウム量から食塩相当量が分かる?
そうしたことから2015(平成27)年の食品表示基準の改正によって、それまで「ナトリウム」の量だけだった栄養表示の基準を分かりやすくするために「ナトリウム量」を「食塩相当量」に換算して表示することが義務づけられたのでした。
食品に含まれるナトリウム量から食塩量を換算した値が「食塩相当量」で、次の計算式で求められます。
<食塩相当量(g)=ナトリウム量(mg)×2.54÷1000>
なお、ナトリウム量が1g(1000mg)の場合は、
<食塩相当量(g)=ナトリウム量(g)×2.54>
*「2.54」の数値は「ナトリウム換算係数」といわれるものです。
ナトリウムは食塩から摂取される?
ナトリウムは、人体にとって生命維持に欠かせないミネラルの1つといわれます。ナトリウムは「細胞外液の浸透圧を調整して細胞外液量を維持」するほか、「筋肉の収縮」「神経の情報伝達」など、重要な役割を持っているといいます。
通常の食生活を送っている中ではナトリウムが不足することはあまり見られないようです。むしろナトリウムの過剰摂取が心配され、摂りすぎによる高血圧や胃がん、食道がんなどのリスクが指摘されています。
ナトリウムは私たちの体内では生成できません。主に食塩の形で摂取されます。ナトリウムを多く含む食品には、食塩、味噌、しょうゆなどの調味料のほか、ハムやソーセージ、かまぼこなどの練り製品、カップ麺、漬物などがあります。
1日の塩分摂取量の目標は?
摂取量が多くても少なくてもいけないナトリウムですが、「日本人の食事摂取基準」(2020年版/厚生労働省)では、1日当たりの平均必要量を男女共通で600mg(食塩相当量は1.5g)としています。
ただこれは現実的な数値とはいえないようです。現在、日本人の1日の塩分摂取量はWHO(世界保健機関)の目標値の2倍に当たる約10gといいます。そこで厚労省は「健康日本21」(第三次)で男女とも成人の1日の塩分摂取の目標値を7.0gに定めました。また「日本人の食事摂取基準」では18歳以上の男性で7.5g未満、女性で6.5g未満を目標値としました。
自分の1日の塩分摂取量、きちんと把握しておく必要がありそうです。
<参考>
*「ナトリウム」(e-ヘルスネット/厚生労働省)
*「ナトリウムの働きと1日の摂取量」(公益財団法人 長寿科学振興財団)
*「ナトリウムとは?体内での働きや摂取の目安、とりすぎを防ぐ方法を解説」(株式会社ニチレイフーズ)
*「塩味〜おいしさの秘密〜」(特定非営利活動法人 日本成人病予防協会)