プラスコラム
PLUS COLUMN

手のひらのヒミツ

くしゅん、くしゅん、あれ、風邪引いた?と思ったら、スギ花粉が飛散している?ってニュース。またもや異常気象かと思いきや、側溝に溜まっていた春の花粉が舞い散っているという話し。これまであまり聞いたことがありませんでしたが、調子が狂いますね。私の周りでもくしゃみしている人、けっこう多いですが皆さん大丈夫ですか?
 

気温が下がってきたこともあり、今回は手についてのお話しです。
日本は病や傷をケアするときに「手当て」という言葉を使いますが、手のひらを当てて治療をしたことが語源らしく、手かざし、あるいは手を当てて病を癒す行為は世界中にあります。
その効果のほどは…、なんともいえませんが、気孔では気の出入り口とされるくらいで、確かに手、とくに手のひらには、特別な場所といえると思います。美容とか、キレイとかいう話しはもっぱら手の甲側の爪や指に集中しますが、今回は手のひらの話しです。
 

まず、手のひらが特別なのは、どこの部位よりもずば抜けて感覚が繊細かつ敏感であること。とくに指先にいくほど繊細です。点字が認識できるのは、指の腹ならではです。熱さや冷たさといった温度、凸凹や滑らか、固い、柔らかいなど感触を計るのも指先の仕事です。毎日の洗顔やスキンケアで日々の微妙な肌の変化を確かめるのも、手。スキンケアのあとで肌を包み込むように手のひら湿布をすると、化粧品がよくなじみ、肌が柔らかくなる。これも手の不思議。

手は自分のためだけでなく、人のためにもよく使われます。手が冷たい人もいますが、基本的に手のひらは温かくて柔らかいから、触られると気持ちがいい。子供の頭や背中をさすったり、いいこいいこすると、守られていると思えて恐怖や不安から開放されて安心する。「手をさしのべる」という言葉どおり、他者を救うのでしょう。

福祉大国スウェーデンでは不安や痛みを解消する補完医療として、タクティールケアという手のひらを使う施術が定着していて、日本でも医療現場で少しずつ広まっています。どうも、タクティールケアによりオキシトシンという脳内物質が分泌されるからではと科学的検証も始まっているよう。ハンドリフレクソロジーやお母さんが子供に頭をなぜてあげて不安が解消されるのも同様に、科学的な理由が見つかるのも遠くないかもしれません。

とにかく人の手でマッサージをしてもらうと気持ちがいい。私はハンドリフレを習っていましたが、手をさするだけでも、うとうとしだす人が続出するのです。

そして、手は人と人とのコミュニケーションにもとても有効です。ハグや握手は分かりやすい例ですね。手のひらがわを相手に触れさせている。「手の内を見せる」という言葉がありますが、相手に心を開いていると伝えたいときは、手のひらを相手に見せるアクションをするといいんだそうです。プレゼンやスピーチのときは、そういうジェスチャーをするといいそうです。心を閉ざしている人は、絶対に相手に手のひらはみせず、逆に絶対に見せないように手を握りしめている場合が多く、それが相手にも伝わるんだそうですよ。
 

キレイと手のひらに何の関係があるのか、ここまで読んで思った人もいるかもしれません。手のひらは、体のなかでもっとも色々なことを感じ取れる場所。表現できる場所なのです。そのことを自覚して、手のひらに関心を寄せてみてはどうでしょう。すると、色々な気づきがあるかもしれません。手のひらが鈍感な人は、色々なことに鈍感かもしれません。鈍っていた感覚が繊細になると、世の中がよく見えてきて、人に優しくしたくなるかもしれません。

手のひらは、意外と丈夫で潤っているので、乾燥していないならスキンケアをする必要はありませんが、全身のツボが集まっている場所でもあるので、揉んだり押したり、自分の手をいじって刺激するのは有効です。そして、いつも手が冷たい人は、感覚が鈍り勝ちなので、手浴をしたり、手のストレッチで温めておくといいですね。
手のひら感度がいい人は、やっぱり魅力的だと思います。

プロフィール

山崎多賀子
(やまざき たかこ)
山崎多賀子

1960年生まれ。
会社員、女性誌の編集者を経てフリーに。雑誌やwebなどで美容、健康記事や美容ルポルタージュ、エッセイなどを手がけ、各誌で活躍。2005年に乳がんが発覚、2006年から女性誌に闘病記を掲載し話題に。
また、美容ジャーナリストという職業と闘病経験を活かし、乳がん治療中もいきいきとキレイでいられるためのメイク法や検診の重要性などを各地で講演。
著書に『「キレイに治す乳がん」宣言!』(光文社)、『山崎多賀子の極楽ビューティ体験記』(扶桑社)がある。
NPO法人キャンサーリボン理事。NPO法人キャンサーネットジャパン認定乳がん体験者コーディネーター。