ストレスとの付き合い方
ストレスの大きさは、測定できるものではありません。
同じ出来事を経験しても、ある人にとってはそれが大きなストレスになり、別の人にとってはたいしたストレスにならないことがあります。
自分を客観的に見て、何をすればリラックスしてエネルギーが上がるのか、自分に対する理解や知識をふやして、上手にストレスをコントロールしていきましょう。
仕事のストレスから体調をくずして、婦人科のクリニックを受診する患者さんが少なくありません。
えっ、ストレスと婦人科は関係があるの? と不思議に思う方もいるかもしれません。けれども婦人科の病気とストレスは、実はとても関係が深いのです。
たとえば、月経不順や無月経など月経にまつわるトラブルの多くは、ストレスが原因になることがあります。また、20代~30代に多いPMS(月経前症候群)や40代後半からの更年期障害などもストレスが大きく影響します。
そもそも女性ホルモンの分泌をつかさどっているのが、脳の「視床下部」というところ。視床下部が、精神面や肉体面のストレスを受けると、、女性ホルモンのバランスが崩れてしまうのです。
視床下部は同時に、自律神経系や免疫系もコントロールしていますから、ストレスを受けると自律神経が乱れて、頭痛、肩こり、腰痛、めまいといったさまざまな不調が現れたり、病気に対する免疫力も低下します。
ストレスには、暑さ、寒さ、騒音といった環境による物理的なストレスや、過労や病気などの生理的なストレス、さまざまな人間関係にまつわるもの、失望、挫折など社会的・心理的なストレスがあります。
このように、私たちを取り巻くストレスはさまざまですが、もっとも多いのは、なんといっても人間関係によるストレスでしょう。
ストレスになる、ならないは人によって違う
ところで、私たちはよくストレスに強い、弱いという言い方をします。このストレスに強い、弱いとはどんなことなのでしょうか。
そもそもストレスの大きさは、測定できるものではありません。また、同じ出来事を経験しても、ある人にとってはそれが大きなストレスになり、別の人にとってはたいしたストレスにならないことがあります。人間関係のストレスもまた、同じことがいえます。
たとえば、あるときこんな患者さんがきました。
会社の同僚の態度にショックを受けて、翌日から会社に行きたくなくなった。今は心療内科に通っているが、月経も順調に来なくなったので、婦人科を受診したといいます。
さらに話を伺うと、こんなことを話してくれました。
「朝、その同僚に『おはようございます』といったら、私を無視してすっと行ってしまったんです。すごいショックでした。翌日から、その同僚の顔を見るのも怖くなって、会社に行けなくなってしまったんです……」。
はたして、彼女は本当に無視されたのでしょうか。もしかしたら、単に同僚の人があいさつに気づかなかっただけなのでは?
あなただったら、こんなときどうしますか?
たとえば、私だったら、もう1回その人の前へ行って『おはようございます』っていいます。それでも相手に無視されたら、『何か気にいらないことありました?』と聞くでしょう。
つまり、同じ出来事でも、ストレスになったりならなかったり、人によって感じ方が違うということです。
ストレスは、ある出来事や相手の人の問題より、むしろそれをどうとらえるかという自分の心の中がカギになります。
忙しいとき、ストレスが大きいときほど、意識的にストレス解消を
人は生きている限り、ストレスを完全になくすことはできません。でも、私たちはそれをやわらげたり解消する力をもっています。
たとえば友達に電話をしてグチを聞いてもらったり、ひとりで静かに本を読んだり、またスポーツジムに行って思いきり体を動かすなど、私たちは日常生活の中で、無意識のうちに自分にあった方法でストレスを解消しています。
忙しくなってきたり、本当にストレスたまってくると、そうした電話でのグチやスポーツなども、なかなかやらくなってしまうものですが、疲れたり、大きなストレスを感じたときこそ、ことさら意識して「自分なりのストレス解消」を行うことが大事です。
それには、自分は何が好きなのか、どういうときにどういう状態になりやすいか、どんなことでモチベーションが上がるのかをわかっておくことが必要です。また、また、自分はストレスを感じたときに、内にこもってしまうタイプなのか、外に対して攻撃的になってしまうタイプなのか、といったストレスパターンを把握しておくことも必要でしょう。
自分のことは、知っているようで意外と知らないものです。自分を客観的に見て、何をすればリラックスしてエネルギーが上がるのか、自分に対する理解や知識をふやして、上手にストレスをコントロールしていきましょう。