ビールで水分補給ができるか?
ノドの渇きは癒されても、体の乾きは癒されない
スポーツやお風呂で汗を流したあとのビールのおいしさは格別。ビール好きの人でなくても容易に想像できるでしょう。でもビールで水分補給をしようと考えているとしたら、かなり危険です。体内の水分が排出されて脱水状態におちいりかねません。
渇いたのどをうるおすビールの爽快感と落とし穴
暑い屋外での仕事やスポーツ、お風呂に入ってたっぷり汗をかいたあとに飲むビールのうまさといったら、もう言葉にできません。
カラカラに渇いたのどをキンキンに冷えたビールが一気に通過していくときの爽快感はまさに至福の瞬間です。ふだんビールを飲まない人でも、ビール党のそんな気持ち、なんとなく想像できるかと思います。
なかにはこの幸せ感に包まれたいために、午後はいっさい水分を口にしないという人もいるほどです。
でもご用心! のどがカラカラに渇いて体が水分を欲しているときにビールを水分代わりに飲んでいると、脱水症を起こしてしまう危険があります。
ビールはたしかにほとんどが水分ですが、アルコールを含む飲料です。
アルコールにはもともと利尿作用があります。利尿作用とは、尿の量を増やし体内の水分を排出する作用のこと。ふだんは脳から尿の量をコントロールするホルモンが分泌されていますが、アルコールによってその働きが抑えられてしまうのです。
酒を飲むとトイレに行く回数が増えるのはこのためです。
とくにビールには、カリウムという利尿効果のある栄養素が含まれているので、ビールを飲むとトイレにいく回数がさらに増えることになります。飲んだビールの量の1.5倍くらいの水分が失われるともいわれています。つまりビール大瓶(633㎖)を2本飲むと2ℓ近くの水分が尿として排出されてしまう計算になります。
汗を大量にかいて水分不足になった体が、ビールを飲むことによって、さらに水分が失われ、体の細胞はカラカラ、スカスカ状態になってしまうというわけです。ビールは水分補給にはなりません。
脱水症予防のために「酒を飲んだら水を飲む」を守ろう
脱水状態になると、細胞の水分が失われて口やのどの渇き、頭痛、血液ドロドロなどがみられます。また水分だけでなく電解質も失われるので、血液の量が減り、血圧も低下。栄養が全身に行き渡らなくなり、老廃物を排泄できなくなったりします。
他にも脳の血流が減ることで集中力が低下する、めまい、足がつる、しびれや全身の倦怠感などがみられるようです。脱水症状が続くと熱中症を起こし、命にかかわることもあるので要注意です。
ビールに限らずアルコール類には利尿作用があります。酒を飲むときの水分補給はどうすればいいでしょう。
まず、酒を飲むときは水を飲みながら、そして飲酒後は水やスポーツドリンクで体に水分を補給すること。酒を大量に飲んで水分補給をしないまま寝てしまうことのないようにくれぐれも注意してください。寝ている間に脱水症状を起こし熱中症や脳梗塞などを引き起こす危険があるといわれています。朝起きての目覚めの水も大切です。
「(酒を)飲んだら(水を)飲む」は酒飲みの鉄則と心得ましょう。