意外と多い女性の痔
女性にとっては身近な病気
「痔」は男性がかる病気というイメージがありますが、実は痔は女性にとっては身近な病気。若い女性の痔も少なくありません。女性の場合、月経前後は女性ホルモンの影響で便秘になりやすく、加えて妊娠・出産も痔を発症させたり、悪化させたりするきっかけになります。
痔の大きな原因となるのが肛門付近のうっ血や便秘。また下痢も肛門の刺激を繰り返すことになるので、痔の原因になります。
3つの痔のタイプ
痔は、大きく、痔核(じかく/いぼ痔)、裂肛(れっこう/切れ痔)、痔ろう(あな痔)の3つのタイプに分けられます。痔核は男女ともに多くみられる疾患ですが、裂肛はとくに女性に多くみられます。
痔核(じかく)
いわゆるいぼ痔です。排便時のいきみなどによって肛門周辺がうっ血して起こります、いきみのくり返しのほか、便秘や下痢、長時間同じ姿勢を続けたり、冷えや、妊娠・出産なども痔核の原因となります。
痔核には肛門の内側にできる内痔核と、外側にできる外痔核があります。症状は若干異なりますが、おもに出血や痔の脱出、残便感(便が残っている感じ)などの症状が出てきます。
外痔核は指でさわると確認できますが、内痔核はさわってもわかりません。しかし、内痔核が進行すると痔核が肛門の外へ脱出し、指で戻さないと戻らなくなります。かなり進行すると、ついには、いつも痔核が肛門の外に出たままの状態になります。
裂肛(れっこう)
肛門上皮が切れた状態で、一般には、切れ痔とか裂け痔などと呼ばれています。かたい便でこすられるために肛門の一部が傷ついて起こります。下痢をすることも原因の1つになります。
裂肛になると排便時はもちろん排便後も肛門が痛みます。そのため、つい排便をがまんしがちです。
排便を我慢してしまうと、便は硬くなってしまいその結果、かたい便が出るときはさらに激痛となり、排便をするのが恐くなってしまうので、また排便を我慢してしまう。こうなるとさらに便が硬くなりますます裂肛を悪化させるという悪循環に陥ります。
慢性化すると、肛門が狭くなり、便が細くなります。
出血は少量で、排便時に紙に付着する程度です。
痔ろう(あな痔)
男性に多くみられるタイプの痔です。肛門の周囲に細菌が感染して、膿が出た後に、膿がたまりやすい管ができるものです。いったん管が形成されるとまた細菌に感染し、膿が出るという状態を繰り返すことになります。激しい痛みがあり、患部に熱をもちます。
原因ははっきりしませんが、下痢の起こりやすい人にみられる傾向にあります。
恥ずかしがらずに初期のうちに治療を
おしりに違和感がある、うんちをしてもすっきり出ない、便が残っている感じがする(残便感)、排便のたびにおしりが痛む、出血する……こんな症状があるときは、専門医のいる肛門科や消化器外科を受診しましょう。恥ずかしさから受診を先延ばしにしてしまう気持ちもわかりますが、軽いうちに治療をすれば、痔核や裂肛であれば薬物療法と生活習慣の改善だけで治すことも可能です。
また、おしりからの出血や便の異常は大腸がんの症状であることもあります。大腸がんとの鑑別をつけるためにも、一度は受診をして原因を確かめることが大事です。
最近は、女医による診療や女性専用の肛門科クリニックも増えてきました。こうしたクリニックでは、女性がリラックスして受診できるよう、さまざまな配慮がされています。気軽に受診をしてください。