耳あかは放っておくに限る?
あなたは耳あかが気になるほうですか?耳かきをどのくらいの頻度でしていますか? 毎日? たまに? 全然しない? その他、耳に虫が入ったときなど、ふだんあまり気にもしなかった耳にまつわる身近なトラブルと解消法を紹介します。耳は音の情報をキャッチして脳に伝える重要な器官。また体のバランスをとる役割もあります。耳の仕組みを知ればトラブルを未然に防ぐ方法も見えてきます。
耳あかにだって、大事な役割があった!
耳は、外に出ている部分を耳介、そこから外耳道という約35ミリほどの耳の穴を通っていくと鼓膜があり、その奥が音を伝える耳小骨(じしょうこつ)などがある中耳、さらに体のバランスをとる三半規管(さんはんきかん)などがある内耳に至ります。
おなじみの耳あかは、外耳道にある皮脂腺(ひしせん)と耳垢腺(じこうせん)からでる分泌液に、はがれ落ちた表皮やほこりなどが吸着してかたまったものといわれます。つまり耳あかは耳の中に入ってきた異物を包み込んで排出する役割をもっているのです。
耳垢腺は粘液を分泌していて耳の中の乾燥を防ぎ、耳の中に入り込んだほこりやゴミなどを吸い取っています。皮脂腺は皮脂を分泌して耳の中にうるおいを与え、傷つくのを防いでいます。これらの分泌腺は耳の入り口から1センチほどのところにあるので、耳あかはそれより奥にたまることはありません。
毎日耳掃除は、かえって耳あかを増やす?
耳あかは放っておいても外に出てきます。神経質に1日に何度も耳かきで耳あかのそうじをしている人がいますが、そんな必要はありません。むしろ耳そうじをしすぎると外耳道を傷つけて炎症を起こしたり、湿疹ができてかゆくなったりします。そうするとますます耳かきをしたくなるという悪循環におちいります。炎症や湿疹が悪化して、耳あかの量を増やすともいわれます。
とくに耳かきを頻繁にしないと気がすまない「耳かきフェチ」の人は要注意。
耳そうじをするなら2週間に1回、風呂上がりに耳の入り口付近を綿棒で軽くふき取る程度で十分といいます。耳かき棒や綿棒で耳の奥の耳あかをそうじしようとすると、逆に耳あかを奥へ押し込んでしまうことになってしまいます。
耳あかがたまって取りにくくなったり、耳の聞こえが悪いと感じたら耳鼻科を受診しするのがいちばんです。
ちなみに耳あかには乾燥している「こな耳」と、湿っている「あめ耳」があります。日本人の8割以上の人は「こな耳」タイプの耳あかだそうです。一方、「あめ耳」は欧米人に多いといわれています。そして、耳そうじの道具といえば、耳かき棒と綿棒ですが、乾燥した耳あかには耳かき棒が、湿った耳あかには綿棒がそうじしやすいようです。日本人が耳かき棒にこだわるのも耳あかのタイプと深い関係があったんですね。
耳の中に虫や水が侵入。あなたならどうする?
耳は鼻と並んで、その穴が外に向かって「ポコッ!」と解放されている無防備な器官の1つです。その開放的な性格のせいか、さまざまな異物の侵入に悩まされます。
たとえば「虫」……。耳の中でガサゴソと音がして不愉快きわまりありません。
あなたの耳の中に虫が入ってきたとき、どう対処しますか?
懐中電灯の光を耳の穴に向かって当てて虫を誘い出す? それともタバコの煙を耳の穴に向かって吹きかけて、虫を殺す? はたまた水を耳の中に入れて虫を溺れさす?
いずれの方法も「ブッ、ブー」不正解。虫を除去することは困難です。とくに水を入れる方法は、虫が外耳道の内側にはりついて取り除くのがむずかしくなるといわれます。
おすすめは、サラダ油やオリーブオイル、ベビーオイルを耳の中に少量たらし入れる方法だそうです。サラダ油などで虫を窒息させてから、ピンセットで耳の中を傷つけないようにそっと虫をつまんで取り出すのです。
ちなみに外耳道はゆるやかなS字状をしていて、中に異物が入りにくい構造になっています。耳の中にサラダ油を入れても奥まで入ることはないといわれます。
なかなか取れないときは無理をしないで耳鼻科を受診して取ってもらいましょう。
虫ほど不快ではありませんが、水が耳に入るトラブルも頻繁にあります。お風呂やシャワー、プールなどの利用時には定番のトラブルといえます。
耳に水が入ると「中耳炎になってしまうのでは?」と不安になる人も多いかもしれません。でも、水が鼓膜の内側まで入らないので、中耳炎になることはないようです。
耳に水が入ったら、水が入った耳を下に向けて反対側の頭を軽く頭をたたいたり、片足立ちでトントンするのがいいようです。綿棒で耳の穴の入り口付近を軽く拭いてもいいかもしれません。けっして綿棒を奥まで入れないようにしてください。
いつまでも耳の不快な状態が続くときは耳鼻科を受診しましょう。
<参考資料>
永岡書店『からだのしくみ図解事典』、成美堂出版『からだのしくみ事典』、万来舎『農家の健康便利帳』