恋愛を科学する 「あの人しか見えない!」恋する人の脳内を満たしているものは
「恋は盲目」という言葉がありますが、恋をすると相手のすべてが好きになって、思うたびに、胸がドキドキ・キュンキュン――恋する男女にいったい何が起こっているのでしょうか。
人をハイテンションにする脳内ホルモンが二人の恋愛を盛り上げる
「誰がなんと言おうと、世界中で彼がいちばん素敵!」――こんなふうに恋に落ちているときに、脳の中で盛んに放出されているのがドーパミンという脳内ホルモン。別名、快楽ホルモンとも呼ばれるもので、脳を覚醒させてやる気や集中力を高めたり、快感や興奮、喜びをもたらせるホルモンとして知られています。
とくに恋愛の初期モードにおいては、男女ともにドーパミンが脳内で活発に分泌されています。1日中街を歩き回って、映画に食事にと夜遅くまでデートしていても、疲れるどころかますます気分がハイになっていくのはこのドーパミンのおかげ。愛する人と一緒のときは、やる気や喜びをもたらすドーパミンがどんどん分泌されているからこそ、疲れ知らずになってエネルギッシュに行動ができるのです。
また女性は、好きな人と一緒にいると「胸がいっぱいになっておなかがすかない」というのもよくあること。
実は、これもドーパミンの分泌が関係しています。ドーパミンが分泌されると脳の視床下部にある脳の性中枢が興奮します。同時に脳の視床下部にある摂食中枢や満腹中枢も刺激されるために、食欲が抑制されるのだそうです。
また、恋に落ちているときには、フェニルエチルアミンというホルモンが分泌されているとか。フェニルエチルアミンも恋愛ホルモンとして知られる物質で、性的興奮や快感に関係してドキドキ感や高揚感をもたらせてくれるのだそうです。
「恋は盲目」になるわけは……
こうした媚薬のようなホルモンの働きで、付き合ったばかりのころは、お互い手が触れあっただけでも胸がキュ~ンとなって恋愛が盛り上がるわけですが、実はこのとき脳内では、活発になっている恋愛ホルモンとは対照的に著しく動きが低下する領域があるそうです。
それは、物事を批判的にとらえる扁桃体(へんとうたい)や頭頂・側頭結合部という部分。ドーパミンがどんどん分泌されて、これらの領域の働きが抑えられているために、恋愛中はたとえば「ケチな男」は「ものを大切にする人」に、「いいかげんな奴」は「おおらかな人」というふうに、なんでもよい面として受け取ってしまうのです。相手の欠点は完全に見えなくなってしまう――ああ、まさに「恋は盲目」なのですね。
しかし、あんなに素敵だった彼のしぐさが、目障りになる日がいつかやってきます。次回は恋の賞味期限についてお話します。
<参考資料。
『恋愛心理学』(ナツメ社:匠英一)