心の疲労をもたらす「感情労働」って何?
「感情労働」という言葉を聞いたことありますか?
最近の流行語かなと思ったら10年以上も前に頭脳労働とか肉体労働に続く第3の仕事の形として使われはじめたらしいです。
いったいどんな「労働」なんでしょうか?
感情をコントロールする必要のある仕事とは?
以前はさまざまある仕事の形態を肉体労働と頭脳労働の2つに分類していました。
肉体労働は主に体(肉体)を使う必要がある仕事のことで、頭脳労働は主に専門知識などを生かして働くことです。
では「感情労働」とはどんな労働なんでしょう。
簡単にいうと「自分の感じ方や気持ちをコントロールする必要がある仕事」ということらしいです。
つまり、自分にとって不愉快なことがあったり、嫌いなタイプの相手であっても、その感情を押し殺して対応することが求められる仕事ということです。
感情労働といわれる仕事には、旅客機の客室乗務員(キャビンアテンダント・CA)、看護師、レストランのウェイトレスやウェイター、ホテルや旅館のフロントの人、デパートの受付嬢やコンシェルジュ、テーマパークのスタッフ、営業マンなどがあげられています。
コンビニの店員や役所の窓口業務の人、企業のサポートセンターのオペレーターなども感情労働的な職業といえそうです。
保護者対応に忙しい学校の先生も感情労働といわれています。
つまり接客が仕事の多くを占めている職業は感情労働ということになるようです。
飲食業などはその代表でしょうか。
でもなかには、愛想のかけらもない店主がムスッと客を迎える人気ラーメン店や、客を「なにやってんの、ダメじゃない!」などと叱りつける酒場の女主人もいたりするようですから、もちろん例外はあるでしょうけど……。
ただ、個人のラーメン店や酒場では感情むき出しの対応も「お店のウリ」として好意的に受け止めてくれるかもしれませんが、実際にはそういうわけにはいかないものです。
たとえば、恋人とけんかして機嫌が悪い看護師がイライラを隠そうともしないで採血したり、嫌いな客が来店したときのウェイトレスが客への嫌悪感をコントロールできずにコップの水を客の顔にぶちまけたりするといった光景はちょっとした恐怖です。
いまの時代は客である受け手の感情を逆なでするようなことは御法度。接客するにあたっては笑顔とていねいな対応を心がけることが何よりも大切といわれています。
「お客様は神様です」は間違って広まった?
「お客様は神様です」といったのは、いまは亡き歌手の三波春夫さんでした。
この発言は昭和36年にある対談でなされたそうですが、以来、この言葉が本人の真意とは大きくかけ離れて世間に広まったことを三波さんは後年、自著で語っているようです。
つまり、スーパーや飲食店でお金を払う「お客は神様」で「何をしてもいいんだ」というような意味として使われていることに心を痛めていたようなのです。
ただ、残念ながらそうした意識は当時から50年以上たった現在でも変わっていないようです。
お金を払うんだから「お客様は神様です」という発想の延長線上に、いまの感情労働の問題があるようにみえます。
ご存知のように自分の感情をコントロールするのは簡単ではありません。大きな心理的負担を伴います。ストレスがたまります。
たとえば不愉快なことがあったり、イライラが募っているとき、落ち込んでいるときなど、誰ともしゃべりたくないものです。
でも、そうした気持ちをグッとおさえて接客しなくてはいけないとしたら……。
客の前で笑顔を振りまける?
さらに怒りっぽい人や短気な人は……?
考えただけでストレス値が急上昇しそうです。
感情労働で疲れ切った心を癒すには、やっぱりストレスの解消です。
カラオケで大声で歌う、部屋で好きな音楽を聴く、温泉にゆったりつかる……感情労働にストレスはつきもの。
感情疲労を起こさないためには自分にあったストレスの解消法を見つけることがいちばんのようです。
そして感情労働で疲弊した心の負担軽減のためにも、そろそろ「お客様は神様」信仰を考え直す時期だと思うんですけど、どうでしょうね……?
過剰な接客は、する側もされる側も何か面映い感じがするんですけどね。
<参考URL>
*「『感情労働』の現場を生き延びる」(東洋経済ONLINE/AERA・2014年5月19日号)
http://toyokeizai.net/articles/-/37521
*「日々疲れ果ててしまうのは「感情労働」のせい?」(YOMIURI ONLINE/読売新聞社)
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170330-OYT8T50031.html?from=yhd
*「三波春夫オフィシャルサイト」((株)三波クリエイツ)
http://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html