
ワサビの抗菌作用で食中毒が防げる?
「バラン」って知ってますか?
弁当をあけるとなんだか目立ってしまう緑色をしてギザギザした笹の葉みたいなもの。
おかずのしきりなどによく使われているようですが、あれって単なるお飾りではなかったのですね。
食中毒を防ぐためのある加工が施されているようなのですが……?
弁当はワサビの抗菌作用で守られている?
知りませんでした。
そこまでは考えてもみませんでした。
茶系や黒系といったどちらかというと暗黒系の色が多い弁当のおかずの中で、配色を考えたうえでの彩り系といった意味合いだろうと思っていました。
ところが……!
……「バラン」には抗菌作用がある!
知っている人にとっては「何をいまさら」といったところでしょうけど、
いまのいままでバランにそんな立派な役割があろうとは予想の外でした。
ちなみにバランを「笹の葉みたいな」と前で書きましたが、正確には「葉欄(はらん)」というユリ科の植物をギザギザに飾り切りにして、食べ物のしきりに使っていたのがその原型のようです。
弁当の他に、にぎり寿司を出前などで頼むと緑色の鮮やかなバランが、それこそバランスよく配置されていて、見た目もきれいで食欲をそそりますよね。
バランの抗菌作用の正体
このバランのどこに抗菌作用があるのでしょう?
じつは「ワサビ」が使われているというのです。
ワサビには抗菌作用があることは昔から知られていましたが、そのワサビに含まれる抗菌物質を抽出してバランの表面にコーティングしてあるというわけです。
ワサビの辛み成分は「アリルイソチオシアネート(AIT)」(アリルカラシ油ともいわれます)と呼ばれるもので、強い抗菌作用があります。
刺身や寿司にワサビがついているのは、生の魚に細菌やカビの繁殖を抑制するはたらきがあるからと考えられているからです。
また、ワサビには魚の生臭さを抑えるはたらきもあります。
ワサビの抗菌パワーが弁当文化を発展させた?
昔は今のように冷蔵や冷凍技術が発達していませんから、生の魚は傷みが早く、食中毒のリスクも大きかったに違いありません。
そんな時代にあって、生の魚とワサビの組み合わせを経験から学び、生かした先人の知恵は「すごい!」のひと言です。
「アリルイソチオシアネート」などという舌をかみそうな物質のことなど、当時は知る由もなかったでしょうし……。
ちなみに「抗菌」というのは「殺菌」とは違います。
細菌やカビが繁殖するのを抑えるというもので、時間が経てば当然、細菌やカビは増えてきます。
抗菌パワーグッズいろいろ
ワサビの抗菌パワーを利用したものにはバランの他にもいろいろあります。
例えば駅弁などの弁当のふたを開けると薄い透明(もしくは半透明)のシートがおかずの上にハラリとかぶせてあることありませんか?
あれも抗菌シートだそうです。
お菓子の容器の内側や外側に貼るタイプのものもあります。
抗菌加工の弁当箱もあるようです。
弁当はジャパニーズ・クールとかクール・ジャパンなどといわれているようですが、その歴史は平安時代にまで遡ることができるらしいです。
当時は干飯(ほしいい)とか乾飯(かれいい)などといわれていたようですが、それが今では、おにぎり、日の丸弁当、幕の内弁当、海苔弁当、松花堂弁当……弁当の種類は星の数ほどあるといわれています。
百貨店が開催する駅弁大会には毎年多くの人が押し寄せます。
昔から弁当と日本人は深い付き合いがあったんですね。
ところで市販の弁当に使われているバランや透明シートですが、抗菌だからといっても日持ちには限度があります。
また弁当に使われているすべてのバランやシートが抗菌仕様とは限りません。
弁当に記載されている消費期限をしっかり確認してください。
ワサビの抗菌力を利用した商品がいろいろ市販されているようですから、食中毒に注意したいこれからの季節、重宝するかもしれませんね。
<参考URL>
*「わさびの優れた殺菌性」(三和食品(株))
http://www.sanwafoods.co.jp/report/03.html
*「ワサビの防腐作用成分〜アリルカラシ油〜」(NPO法人日本食行動科学研究所)
http://ifbs.or.jp/culture/2011/03/ワサビの防腐作用成分~アリルカラシ油~/
*「ワサオーロとは?」(三菱ケミカルフーズ(株))
http://www.mfc.co.jp/product/wasaouro/about/index.html
*「ワサガード抗菌シートシリーズ」((株)虎変堂)
http://kohendou.co.jp/product/series5/