他人のタバコの煙が原因で世界で年間60万人が死亡?
どこでもタバコを吸えた昭和40年代。男性の8割以上が喫煙者だった?
受動喫煙とか副流煙といったことがいわれはじめたのはいつごろだったでしょうか?
30〜40年くらい前までは街のあちこちでタバコを吸う人がみられたものでした。
路上はもちろん、電車や映画館の中、さらに病院の待合室でも来院者が平気でタバコを吸っていました。
喫茶店は文字通りコーヒーを飲みながらタバコを吸う店であり、店内はタバコの煙が充満していたし、スナックや居酒屋はいうに及ばずで、紫煙などといった文学的でかっこいいといった生易しいものではなく、店全体に靄がかかったようでした。
職場もしかりで、喫煙室などは設けられておらず、自分の机にマイ灰皿があり、自由勝手にタバコを吸えました。分煙などという概念などない、日本全体いたるところ、まさにタバコの解放区のようでした。
喫煙に対して寛容というか、なんとも能天気で単純で、他人の健康など気にもとめない無責任、傲慢な時代だったんですね。
実際、かつては男性のほとんどがタバコを吸っていました。喫煙率がピークの昭和41(1966)年の喫煙者は男性の約84パーセントもいたんです(女性は約18パーセント)。
男性のほぼ全員が吸っていたといってもいいですよね。信じられません……。
でも当時の映画を見るとタバコを吸うシーンがよく出てくることに驚きます。
当時、タバコは「大人になってから吸うもの」(それはいまでも変わりないけれど……)でした。
大人は当然、タバコを吸うものだったのです。大人がタバコを吸うことに誰も違和感を抱かない、そんな時代でした。タバコが嫌いな人だっていたはずだけど、「吸わないで」なんていえない雰囲気だったんでしょうね。
それから半世紀を経た平成29(2017)年、喫煙者は男性の約28パーセントに下落(女性は約9パーセント)。ピーク時の3分の1にまで減少しました(いずれもJT調べ)。
受動喫煙により国内で1万5000人もの命が奪われている?
いまではタバコが健康の大敵だということは誰でも知っています。タバコを吸う本人に限らず、周囲でタバコの煙を間接的に吸い込む受動喫煙(間接喫煙)による健康被害について知らない人はいないでしょう。
肺がんや虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、脳卒中、乳幼児突然死症候群などと受動喫煙の因果関係は「科学的に推定するのに十分」だとされています。
国立がん研究センターによれば、受動喫煙のある人は、ない人に比べて肺がんになるリスクが約1.3倍だということです。さらに受動喫煙で命を落とす人が国内で1万5000人もいるといいます(……受動喫煙による超過死亡というらしいです)。
世界では年間およそ60万人もの人が受動喫煙で命を落としているといわれています。
喫煙者の口から直接吸い込む煙のことを主流煙というのに対して、火のついたタバコの先端から立ち上る煙のことを副流煙ということは多くの人が知っています。そして、その副流煙の方に多くの有害物質が含まれているということも知られています。
たとえば発がん物質のジメチルニトロソアミンは、主流煙の19〜129倍、やはり発がん物質のニトロソピロジンという物質は9〜76倍も含まれているそうです。
国立がん研究センターは「受動喫煙は迷惑や気配り、思いやりの問題ではなく、健康被害、他者危害の問題である」といっています。
「わたしはコレで、会社を辞めました」という禁煙グッズのテレビCMがかつてありました。このCMでの「コレ」はじつはタバコではなく別のことなのですが、当時も今もタバコの煙を嫌って会社を辞めた人もいるのではないでしょうか。
受動喫煙や副流煙による危険にさらされた職場で、あなたやあなたの家族は働けますか?
そんなことを考えさせられるタバコ問題。深刻です。
ちなみにWHOによれば、日本は受動喫煙対策では後進国。時代遅れなのだそうです。
<参考資料>
*「世界の受動喫煙対策」(東京新聞日曜版/2017年7月16日)
<参考URL>
*「成人喫煙率」(JT全国喫煙者率調査)
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
*「受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍」(国立がん研究センター)
http://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/press_release_20160831.html
*「日本では受動喫煙が原因で年間1万5千人が死亡」(厚生労働省)