古くて新しい「結核」という病気。若い人の間で増えている?
結核と聞くと「昔の病気」だとつい思ってしまいませんか。
どっこい、今でも年間1万8000人ほどの人たちが結核を発病しているとか。
そういえば毎年、テレビや新聞で「……結核に感染、発病していることが分かりました……」というようなニュースを目にします。
この古くて新しい病気、結核について知らない意外なことがありそうです……。
「予防接種したから感染しない」と安心してはいけない?
結核のニュースが新聞、テレビで流れるたびに「ヘェ〜今でも結核にかかる人がいるんだね」などと思っていましたが、意外や意外、毎年約1万8000人もの人が結核を発病しているらしいです。
過去の病気だと思っていたのが、今でもしっかり病気が生きていたことに驚いてしまいます。
かつて結核は「国民病」とか「亡国病」などといわれて、長い間、日本人を苦しめてきた「不治の病」でした。1951(昭和26)年の結核罹患率は698.4(人口10万人当たり)で、患者数にすると約60万人だったといいます。たとえば現在、がんにかかる人は年間約100万人ですから、その半数を超えるものすごい数の人が、その当時、結核にかかっていたということです。
結核による死亡者数もその当時(昭和25年)は12万人を超えていて、日本人の死亡原因の第1位でした。現在は約2000人(平成27年)ですから当時のわずか0.016パーセント。
死亡順位も29位あたりのようです。
「結核?……大丈夫だよ。だって子どものとき予防接種したもの……」
なかにはそいう人もいらっしゃるでしょう……
というか、ほとんどの人は「自分は関係ない!」「結核なんて誰かよその人の話でしょ!」
……そんな思いでいるにちがいありません。
その自信の根拠は、例のBCGですよね。ツベルクリン反応とかなんとかがあって……みたいな、アレ!
ところがものごとというものは自分の思いどおりにはいかないもの。
BCGの予防接種の効果は、10年から15年で切れるらしいのです。
ですから子どもには予防効果があっても、大人になるころには結核の予防効果はかなり薄まっているというわけです。
増えている若い人の結核。無理なダイエットや不規則な生活が原因?
でも、じつは結核に感染しても必ず病気が発病するわけではないのだそうです。
また結核菌を吸い込んでもすべてが感染につながるというわけではないようです。
多くの場合、もともと体に備わっている抵抗力によって体外に排除されるのだそうです。
また、「感染」イコール「発病」ということにはならず、健康な状態であれば結核菌が体の中にあっても免疫力で抑え込むのだそうです。
「休眠」とか「冬眠」などと呼ばれているようですが、この結核菌の封じ込めは数年から数10年続き、一生発病しないで菌は休眠のままだったり、死滅するというのが大半だそうです。
ではどういうことで結核が発病するのかというと、じつはまだよく分かっていないようです。
おそらく免疫力が弱まっているときに体の中で休眠していた結核菌が活動をはじめて発病するのではないかと考えられています。
お年寄りが注意しなければいけないのはもちろんなのでしょうが、最近では若い人でも発病する例も多くみられるようです。
若い世代は結核に感染したことがないので菌を吸い込むと感染しやすかったりするそうです。
空気感染する結核菌の場合、マンガ喫茶、カラオケボックス、ネットカフェなど換気が不十分な部屋では感染しやすく、感染後、数カ月で発病することもあるようです。
感染した若い人の10〜20パーセントが発病したという報告もあります。
残業続きによる過労や無理なダイエットによる栄養不良、過度のストレス、夜更かし、睡眠不足など不規則な生活による体力の低下、なんらかの病気があるといったことで免疫力が落ちることも結核の発病につながると考えられるようです。
ところで結核といえばほとんどの場合、肺結核のことをさしますが、肺以外にも結核菌によって腎臓や骨、脳などの臓器が冒されることがあります。
肺外結核というらしいです。
正岡子規は結核菌が脊椎を冒す脊椎カリウスで亡くなりました。
他にも樋口一葉、国木田独歩、石川啄木、青木繁といった人たちも結核で亡くなりました。
彼らは20代から30代の若さで亡くなりました。恐るべし結核!
<参考資料>
*「結核」(東京新聞日曜版/2017年8月13日)
<参考URL>
*公益財団法人結核予防会HP
*「結核の統計」(公益財団法人結核予防会結核研究所疫学情報センター)
http://www.jata.or.jp/rit/ekigaku/
*「平成27年結核登録者情報調査年報集計結果について」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132952.html
*「結核は日本の重大な感染症です」(東京都中野区)
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/402000/d001720.html
*「2016年のがん統計予測」(国立がん研究センターがん情報サービス)
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html