「あくび」は眠気のサイン? それとも覚醒のサイン?
眠いとき、疲れたとき、退屈したとき……つい出てしまうのが「あくび」。
人前でするのは「失礼だ」ということで憚られますが、じつはそうでもないらしいのです。
人間はもちろんネコやイヌに限らず多くの動物がするという「あくび」の不思議を考えてみました。
「あくび」は、口を開けて背を伸ばして行う行為?
「あくび」を漢字で書くと「欠」とか「欠伸」となりますが、「欠」という字は、「口を開けてする動作をあらわす文字」(大辞林・第二版/三省堂)で、「欠伸」は広辞苑によると「あくびと背伸び」のことで「けんしん」とも読むのだそうです。
この2つの漢字、文字通り「あくび」をあらわすにはピッタリというか、あくびにこの字を当てた人は偉いもんだとあらためて感心してしまいます。
ところであくびの起源は相当に古いらしくて、脳の中でも原始的なところである室傍核(しつぼうかく)という場所にあくびをになう中枢があるらしいです。
太古の昔から人間はあくびをして過ごしてきたんですね。
そのあくびの数ですが、どうやって計算したのか分かりませんが、人間は一生に24万回のあくびをするという記述を何かで見たことがあります。
80歳まで生きたとして1年で3000回、1日に8回のあくびをする計算になります。
そのくらいのあくびなら誰でもしていそうです。
24万という数字もあながちいい加減な当てずっぽうの数字ではなさそうです。
あくびは「寝よう」ではなく、「起きよう」とするサイン?
あくびはどうして出るのか?
「血液の中の酸素が不足して、あくびをすることで空気を吸い込んで酸素を補給する」という説がいままで有力でした。
大辞林(第二版)にも「血液中の二酸化炭素の濃度が高くなると、呼吸中枢が刺激されて起こる」と説明されています。
ところがいまではそういった説は否定されているらしく、最近では「あくびによって脳の温度を調整して、体を目覚めさせようとするはたらき」ではないかという考えがあるようです。
また、あくびは「ウ、ウガガ〜、ウア〜」といった具合に、口を目いっぱい開けたり、体を伸ばしたりしますが、そのとき顎や気道が大きく動かされることで血流が促進されて脳が目覚めるという説もあります。
いくつもの説が飛び交うあくび研究ですが、あくびが体の「覚醒」のためにはたらいているという点では、どの説も一致しているようで、いまのところ、この覚醒作用は「確実」といわれているようですが、一方では「そうとも言い切れない」という研究者もいるとか。
あくびの研究にまだ最終決着はついていないというのが現状らしいです。
人前でのあくびは、ほめられる行為といえるのか?
ただ、「あくびは眠気を促しているものではなく、眠気を妨げ、体を目覚めさせようとする」ものという説には、それなりに説得力があるように感じます。
たとえば朝起きたときのあくびは、体を睡眠から目覚めさせるためのものだ。
夜のあくびは、眠い状態から目を覚まさせようとするはたらきなのだといわれれば「そうか」という気持ちになります。
また、退屈な会議や打ち合わせ、書類の整理、夜に車を運転しているときのあくびなども、「眠ってはいけない!」と目を覚まさせようとしている脳の覚醒作用なんだといわれれば「なるほど」ということにも……。
だからといって会議中にあくびをすれば、やはり「けしからん! たるんどる」と叱責されるだろうし、得意先と打ち合わせ中にあくびをすれば相手方は不快感をもよおすだろうことは容易に想像がつきます。
「そうか、起きようとしているのね」とか「なかなかがんばっているじゃないか」などといった好意的な反応は期待できないと思います。
たとえあくびが「起きようとする気持ちの表れ。ほめられていい」という研究者がいたとしても、やはり自分の目の前で「ウ、ウンガー」とあくびをされたらムッとしますし、気持ちが萎えます。
でもそんな気持ちの一方で、「目覚めようとがんばっているのね」といったあたたかい目で見てあげようかなといった気持ちもないではなく……でもやっぱり目の前ではねえ。
自分は了見が狭いのかなあという思いもあったり……たかがあくび、されどあくび……なんだか、あくびって気疲れします。
早いとこあくびの研究に決着をつけてほしいなあ。
<参考URL>
*「なぜあくびが出る?」(日経電子判)
https://www.nikkei.com/article/DGXBZO12224600U0A800C1000000/
*「あくびが出るのはどんなとき?」(日経Gooday)
http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/15/071300026/021200035/?P=2
*「あくびは何のためにするの?」(日経Goody)
http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/14/091100003/100200021/