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ふいに起こる めまい・耳鳴り

ふいに起こるめまいや耳鳴りは、とてもつらいし、不安な気持ちになりますよね。めまいや耳鳴りの原因はさまざまですが、とくにめまいは、脳の病気など重大な病気のサインとしてあらわれることもあるので、油断はできません。めまいや耳鳴りが起こったら、一度は受診して原因を確かめることが大切です。

あなたのめまいのタイプは?

ひと口に「めまい」といっても、そのあらわれ方は大きく分けて以下の3つのタイプにわけられます。あなたのめまいはどのタイプですか?

1. グルグルと目が回る「回転性めまい」

自分や自分の周囲がグルグル回っている感じがするのが、回転性めまい。めまいとともに、吐き気やおう吐をともなうことが少なくありません。また、耳の聞こえが悪くなったり、耳鳴りなどの症状がともなうこともあります。回転性めまいの多くは、メニエール病など耳(内耳)の病気で起こりますが、脳梗塞や脳出血など脳の異常で起こることもあります。

2. 体がフワフする「浮遊性めまい」

体がふわふわとして、宙を浮いているような感じがするのが、浮遊性めまいです。浮遊性めまいが起こったときに、頭痛やしびれ、マヒなど神経の症状がともなう場合は、脳梗塞や脳腫瘍など脳の異常が疑われます。

3. 目の前が暗くなる

立ちくらみ、体が浮いた感じ、一瞬意識が薄れる感じなどがあります。仮性めまいは、低血圧や高血圧、糖尿病などの全身性の病気や、自律神経失調症、更年期障害などでも起こります。

しびれ、マヒがともなうめまいは要注意

ひどいめまいほど、重い病気が原因と思われがちですが、めまいの重さと病気の重さは必ずしもイコールではありません。たとえめまいの程度が軽くても、ろれつがまわらない、意識がはっきりしなくなってきた、手足にマヒがあるなどの場合は、脳梗塞や脳出血など脳の異常が考えられ、緊急を要することが多いのです。ためらわずにすぐに病院に行く必要があります。頭痛に関して病名を想定するのはたいへん難しいです。しかし頭がガンガンするような頭痛や、いつもと違う頭痛がしたりの場合は注意したほうがいいです。

 

一方、めまいに加えて、耳鳴りや聞こえにくいといった難聴がともなう場合は、内耳の病気が原因であると考えられます。
内耳というのは、耳の一番奥にあって、音を感じる蝸牛(かぎゅう)や体のバランスをとる前庭(ぜんてい)、三半規管(さんはんきかん)からできています。そのため、内耳にトラブルが起こると聴覚と平衡感覚の両方に障害が起きて、めまいや難聴などの症状や耳鳴り、耳閉感(耳がふさがった感じ)などがあらわれます。

耳に違和感があるときは、迷わず耳鼻咽喉科へ

内耳が原因でめまいが起こるもっとも代表的な病気は、メニエール病です。
突然起こる回転性の激しいめまいの発作を繰り返す病気で、発作は30分から数時間にわたります。激しいめまいに、吐き気やおう吐、冷や汗などがあらわれたりします。耳閉感、耳鳴り、難聴をともなうのも特徴です。
メニエール病は内リンパ水腫(内耳の水ぶくれ)によって起こります。なぜ起こるのか、はっきりした原因はわかっていませんが、心身のストレスが大きくかかわっていることがわかっています。命にかかわる病気ではありませんが、繰り返していると難聴が戻らなくなることもあるので、早期発見と早期治療がとても大切です。


「良性発作性頭位めまい症」も内耳性では頻度の多いめまいです。寝ようとして床にはいる時、寝がえりを打ったとき、上にあるものと取ろうとのけぞった時など、頭を特定の位置に動かすとあらわれるめまいです。なぜこのようなめまいが起こるのかは、原因は内耳前庭にある耳石がはがれ、半規管内を浮遊するためだという説が一般的です。
めまいが起きたときは、安静にするのが基本ですが、良性発作性頭位めまい症に関しては、めまいを起こす姿勢を見極めて、それを少しずつ練習して慣らしていくようなリハビリも効果的です。


そのほか、ウイルスや細菌が原因で起こる内耳炎や前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)、突発性難聴でも回転性めまいをともなうことがあります。突発性難聴は、なんのきっかけもなく突発的に耳の聞こえが悪くなるものです。発症後早くしないと聴力の回復が難しくなるので、すぐに耳鼻科を受診することが大事です。
めまいというと、内科を受診してよいのか耳鼻科を受診してよいのか、迷う方も多いでしょう。基本的に、めまいに加えて耳鳴りがしたり、聞こえが悪いなど、耳の違和感があるときは、迷わず耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

受診時に伝えたい症状ポイント

めまいの症状やめまいが起こったときの状況は、医師が診断するときの重要な手がかりになります。めまいが起こったときは、以下のことをメモ書きにしておき、受診時に医師に伝えましょう。

(1)何をしていたときにめまいが起こったか(例:朝、布団から起き上がろうとしたとき、歯を磨いていたとき、夜中めまいで目が覚めた、など)
(2)左右、どちらまわりのめまいだったか。
(3)めまいが起きたとき、左右どちらの耳に耳鳴りや難聴などの違和感を感じたか。
(4)めまいや耳の違和感は、どのくらいで持続したか。

など。

ストレス・過労・睡眠不足もめまいの大敵

内耳性のめまいは、おもに薬物療法で治療していきます。
また、内耳の障害で起こるめまいは、自律神経失調症や更年期障害で起こるめまいと同様、過労やストレス、生活リズムの乱れなどが発症に大きくかかわっています。めまいの予防・対策には、これまでの生活を見なおしてみることもとても大切。睡眠を十分にとるようにして、生活リズムを整えていきましょう。また、ストレス対策も必要です。1日30分でもよいので、自分のためのリフレッシュ&リラックスする時間をもって、上手に気分転換をしていきましょう。

プロフィール

鈴鹿 有子 先生
耳鼻咽喉科
鈴鹿 有子 先生

金沢医科大学 耳鼻咽喉科学教授
女性総合医療センター長
金沢医科大学女医会会長

関西医科大学卒業後、耳鼻咽喉科学教室へ入局。
1985年よりハーバード大学耳鼻咽喉科学へ留学。1992年からジュネーブWHO本部事務局で難聴予防課担当。
その後大阪北逓信病院耳鼻咽喉科部長を経て2000年から金沢医科大学へ入職。
専門はめまい、難聴と耳手術、音声改善手術。現在の研究テーマは聴覚アンチエージング。音、声、音楽を聞くことによって脳を刺激し、それが脳の賦活、コミュニケーション、アンチエージングにつながることを研究中。