眠れぬ夜に羊を数えるのは逆効果だった!?
秋も深まり、心地よく眠れる季節になりました。
でも、不眠症の人にとっては秋の夜長は、かえってつらい時期かもしれません。
今回は不眠についてとりあげます。
2人1人が眠りに問題あり?
不眠大国と呼ばれる日本。不眠に悩む人は5人に1人とも3人に1人ともいわれていますが、近年は睡眠に問題を抱えている人がもっと増えているようです。
寝具メーカーの東京西川(西川産業)が約1万人の睡眠事情を調査した「東京西川 睡眠白書2018」によると、約半数の人が「不眠の疑いがある」という結果が出たそうです。
調査で用いたのは、世界共通の不眠症判定法「アテネ不眠尺度」。
スコアが6以上の場合「不眠症の疑いあり」とされるそうです。
今回の調査では、スコア0以上3以下が全体の32.5%。
スコア4以上5以下が18.2%。
「不眠症の疑いあり」とされる6以上が49.3%という結果がでました。
また、睡眠の質の満足度については、「満足」と答えたのはわずか3割にとどまり、残り約7割の人が「自分の睡眠に不満がある」と回答しています。
およそ2人に1人が眠れぬ夜を迎えていて、多くの人が自分の眠りに満足できていないという結果になりました。
さまざまな不眠症
睡眠障害にはさまざまな種類があるようですが、多いのがいわゆる「不眠症」と呼ばれるもののようです。
また、不眠症にもいくつかタイプがあって『家庭医学大事典』(小学館)によると、
・なかなか寝付けない「入眠障害」
・夜中に何度も目が覚めて、その後眠れない「中途覚醒」
・早朝目が覚めて、その後眠れない「早朝覚醒」
・眠りが浅く熟睡感がない「熟眠感欠如」
などがあるようです。
いずれにしても、不眠症はつらいものです。「あぁ、今夜もまた眠れない」と思うと、夜が怖いという人も多いようですね。
ヒツジが1匹、ヒツジが2匹……
ところで、眠れないときの対処法として有名なのが「ヒツジが1匹、ヒツジが2匹……」と、ヒツジを数えることで安眠につくというものではないでしょうか。
ヒツジを数える理由は諸説あるようです。
もともとは英語圏内で「one sheep, two sheep, three sheep」と数えることから来たようです。
「sheep」という単語は息を吐くように発音するので、腹式呼吸が促されて副交感神経が優位になり、だんだんと眠くなるという説。
また、牧場でヒツジが1匹、2匹と柵を超えるシーンを思い浮かべると、リラックスできて眠りに入りやすいといった説などもあるようです。
ヒツジを数えると眠くなるとまことしやかに語られていましたが、近年ではヒツジを数えるとかえって入眠を妨げるという研究結果が出ているそうです。
無理に眠ろうとすると、ますます目が冴える
またかつては、「眠れなくても床で横になっていれば体が休まる」といわれていました。眠くなくてもとにかく床で横になっていることが推奨されていましたが、現在は不眠症では「やってはいけないこと」とされています。
眠くないのに無理に眠ろうとすると、かえって緊張して眠れなくなってしまうそうです。その結果、「今夜も眠れるだろうか」という不安をもち、不眠症がよけい悪化してしまうといわれています。
寝床にしがみつかないことが大事
厚生労働省の「健康づくりのために睡眠指針2014年」では、「眠ろうとする意気込みが頭を冴えさせて、寝つきを悪くする」とし、
・眠くなってから寝床に就く、就床時間にこだわりすぎない。
・眠くなってから寝床に入り、起きる時間は遅らせない。
・眠りが浅いときはむしろ積極的に早寝早起き。
などの指針を提示しています。
不眠症対策の極意は「寝床にしがみつかない」ことにあるようです。
不眠が気になるときは、眠くなってから寝床について、早起きをするとよいといわれています。
「寝床は眠れる場所」だと認識することで、不眠が改善していくということだそうです。
ところで、不眠はうつ病の症状の1つであることも。
不眠が続いて不安感がある、食欲がないなどの場合は、放っておかずに受診することをおすすめします。
<参考資料>
*家庭医学大事典(小学館 刊)
<参考URL>
*「不眠大国日本 約半数の人が不眠の疑いあり」(東京西川)
https://www.nishikawasangyo.co.jp/news/news_file/file/20180828101048.pdf
*健康づくりのための睡眠指針(2014年)厚生労働省(抄)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/toukei/jinkou/jinkou_64/siryou_1e.pdf