抗菌薬は風邪に効かない!?
いよいよ風邪の本格的な流行期。
現在風邪ひき中で、医療機関で薬を処方してもらった人も多いのでは?
でもその薬本当に必要ですか?
薬剤耐性菌が及ぼす影響
新聞などの報道で、ちょっと気になる記事が出ていました。
それは2017年に国内では薬剤耐性菌によって8000人以上が死亡したという推計が出ているというものです。
この推計は国立国際医療研究センター病院などの研究チームがまとめたもので、耐性菌の死者数を全国規模で調べたのはこの研究は初めてだといいます。
増殖・多様化する増殖薬剤耐性菌
ご存じの方も多いと思いますが、薬剤耐性菌とは、文字通り感染症の原因となる細菌に有効な抗菌薬(抗生物質・抗生剤)が効かなくなってしまうもの。
つまり治る病気も治らなくなってしまうのです。
薬剤耐性菌は、細菌性肺炎などの感染症治療だけでなく、手術時の感染予防などさまざまな医療の妨げになることが指摘されています。
耐性菌がパワーアップする原因
専門家はその原因として、抗菌薬が正しく使われなかったことをあげています。
処方された抗菌薬をのみきらなかったり、必要のないときに飲んだりすると、細菌が生き残ろうとして変化して、パワーアップしてしまうのだそうです。
薬剤耐性菌については、当コラムでも何回か取り上げていますが、今、薬剤耐性菌は多様化・増殖して、世界的な問題になっているのです。
抗菌薬で風邪は治せない!?
ところでみなさんは、医療機関で「早く風邪を治したいから、抗生剤(抗菌薬)を処方してください」といったことはありませんか?
実は抗菌薬が退治するのは細菌ですから、風邪やインフルエンザウイルスには効かないのだそうです。
つまり、風邪やインフルエンザには不要な抗菌薬ですが、前述の国立国際医療研究センター病院が行った調査によると、約半数の人が「抗菌薬は風邪やインフルエンザに効果がある」と誤った認識をもっていました。
また「風邪で受診したときにどんな薬を処方してほしいですか」という問いに対しても、風邪やインフルエンザには効かない「抗菌薬・抗生物質を処方してほしい」と答えた人が3割もいました。
正しく飲んで抗菌薬を味方につけよう
いざというときに、抗菌薬が効かないなどということにならないよう、抗菌薬はのまないことが大事です。
また、医師から細菌感染が原因で医師から処方された抗菌薬を飲むのを途中でやめてしまうと、抗菌薬に耐えた細菌が生き残って薬剤耐性菌になるそうですから、薬は医師の指示通り正しく飲むことが大事です。
抗菌薬を飲む機会をできるだけ減らすためには、なるべく病気にならないようにすること。
そのためには、規則正しい生活や睡眠、手洗い、ワクチンなどやはり基本的な感染症対策が大事のようです。
<参考資料>
*「薬剤耐性菌で年8000人死亡」(東京新聞 2019年12月5日付)
<参考URL>
*「抗菌薬意識調査レポート2018」(国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)
http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20181026_ig_vol8_report.pdf
*AMR臨床リファレンスセンタープレスリリース
http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20191126_press.pdf
*「かしこく治して、明日へつなぐ~抗菌薬を上手に使ってAMR対策~」(国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)